小池重明アマ名人(当時)が紹介する先手後手二枚落将棋、二枚落対二丁飛車将棋

近代将棋1982年10月号、小池重明アマ名人(当時)の連載随筆「将棋と酒」より。

○切れ負け将棋

 最近はアマチュアの大会でもチェスクロックを使い、切れ負けのルールを採用する場合が多い。七十分切れ負け、三十分切れ負けという具合いである。大会の運営がスムースに行くからである、弊害も多いがしばらくは切れ負けルールが幅を利かしそうである。

 時計に慣れる意味と直感力、大局観などを養うためにたまには五分切れ負け十分切れ負けの将棋も良いと思う。大学将棋部では三分切れ負け将棋などもやっているみたいだ。

 しかし切れ負け将棋(五分、十分)ばかり指していると手があれるということもあるのでたまに指すのが良いと思う。

○先手後手二枚落将棋

 双方とも二枚落ちで指す。小駒だけの戦いとなる。この将棋の利点は小駒の使い方、特に歩の使い方が上手になる。キメのこまかい攻めが必要なので(乱暴するとすぐ切れてしまう)丁寧な将棋が指せるようになる。足の短かい駒ばかりなので大駒の威力がいかに強いかということを痛切に感じる。欠点は時間がかかり、千日手になりやすい。入玉に関してのルールの決め方も必要(入玉はなしとか)。小粋な味のある将棋である。

○二枚落対二丁飛車将棋

D図が指し始め図となる。角のかわりに飛を並べる。二丁飛車の威力が強いか、小駒だけでいかにして押え込むか。大駒の使い方、小駒の使い方が一度に勉強出来る将棋である。先手、後手が大きくひびく。二丁飛車側が定先で丁度よい手合いか?

E図うっかり△4二銀だと▲2六飛と2本飛車を並べられ大変なことになる。このように小駒側は細心の注意が必要となる、飛側はいかにして網を破るか下手をすると押さえこまれて手も足も出なくなる。一局ずつ交互にすると面白いし、勉強になる。また、飛を成っても小駒が取れずと金もいないと攻めることが出来ないということが良くわかる。

 以上色々な将棋を紹介したが、この他にもまだ沢山ある。私の感じでいうと、つい立て将棋これはまったく面白い。しかし実戦には役にたたない。勉強になるのは、たまに指す短時間の切れ負け将棋、先手後手二枚落将棋、二枚落対二丁飛車将棋、この三つは非常に役にたつと思う。一度おためしあれ。

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昨日の変則将棋は、一部を除いて、実力養成には役立たないけれども気楽にできるゲーム。

今日の変則将棋は、勉強になって実力養成にも役立つものばかり。

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先手後手二枚落将棋は、地味な戦いがひたすら続くような感じがする。

いろいろな勉強の要素が詰まっていそうだ。

小駒の使い方が上手くなりながら忍耐力も同時に身に付いてきそうだ。

棋風が変わってしまう可能性があるかもしれない。

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二枚落対二丁飛車将棋は、どう見ても二丁飛車側が攻める手段が難しそうだ。

飛車が大好きな私が見ても、二枚落側を持ちたいような気持ちになってしまう。

どちらを持っても勉強になりそうだが、不条理さを痛切に感じて、早くこれをやめて普通の将棋を指したい、と私だったら思うかもしれない。