森雞二八段(当時)「これで酒を浴びる程飲んでこい」

近代将棋1984年2月号、「棋界ミニ情報」より。

連盟卓球部

 11月29日、新宿歌舞伎町にある卓球場で例会が行われた。

 石田和雄八段をはじめ幹事の大野八一雄四段、植山悦行四段、泉正樹四段ら若手棋士と奨励会員数名が参加した。

 3,000球ノーミスでラリーを続ける全日本の選手には程遠いが、それなりの熱戦であった。

 部長の森雞二八段は欠席であったが、大野四段にこれで酒を浴びる程飲んでこいと5,000円を渡したそうである。

 翌日に森八段との対局を控えた大野四段が予定通りの展開になったのはいうまでもない。

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「これで酒を浴びる程飲んでこい」と10万円を渡したら、所期の目標は確実に達成できるかもしれないが、資金効率が悪すぎる。

1万円ならどうか。まあまあ妥当な線のような感じがする。卓球部の皆と打ち上げをやって、散会になった後に一人で行きつけのスナックなど立ち寄り、帰りは確実に遅くなる。ただし、打ち上げ費用のカンパとしても妥当な金額なので、大野八一雄四段(当時)が一人で使ってくれるかどうかは微妙。

逆に2,000円のような金額なら、打ち上げ散会後に一人でラーメン店に寄り、ビールとチャーシュー麺と餃子を頼んでお終いで効果はほとんどなさそう。

5,000円という金額は絶妙なのかもしれない。

卓球部打ち上げの資金援助としては少なすぎるので、やや罪悪感を感じながらも一人で使ってしまう。もう5,000円足せば行きつけのスナックにも行ける、行ってみよう。飲めば気分も大きくなるし、何か得をしたような感じにもなる。帰りも遅くなる。

大野八一雄四段が卓球部の打ち上げに使ったのか一人で使ったのか、どちらかは分からないが、とにかく森雞二八段(当時)の魔術師ぶりが十二分に発揮された展開だと思う。