将棋世界1989年12月号、駒野茂さんの「奨励会三段リーグレポート」より。
三段リーグ開始早々は、いつも決まって予想になるが、筆者としては毎回同じパターンではいけない、と、こう思いながらも、またやってしまった。
第6回の表を見た読者感想はいかがなものだろう。この人に上がってもらいたい、これまでの奨励会の記事内容ではこの人が有力そうだ、などなど、色々な見方や予想があると思う。
棋界での見方、評価では、杉本、郷田、丸山、深浦の4名を有力な昇段候補としている。
筆者もそのラインが一番と思ってはいるものの、常日頃奨励会の例会でみんなの気迫、気合いに触れていると一概にその4名とも言えないのだ。
第6回が開始される前までは、郷田、庄司、北島、平藤、田畑の5人を昇段候補として考えていて、将棋マガジン誌ではこう書いた。しかし、10月23日の例会を見た限りでは、この予想、少々心もとなくなってきた。庄司、北島、平藤の3人はいいとしても、郷田、田畑の両名に今ひとつ覇気を感じ取れなかったのである。
郷田は体を鍛えるためにテニスをやっている。日焼けした顔が他の色白の三段陣と比べると印象的に映る。ただその健康的な郷田がなぜかひ弱に見えた。以前の精悍な顔つきではないのである。出だし2連敗。何か悩みでもあるのか。
連鎖反応という訳ではないと思うが、田畑も今ひとつだ。田畑の気合いの入れ方のひとつに、対局中 郷田の顔を見るというのがある。同じ大友門下で、田畑が兄弟子。兄弟子としては、弟弟子に昇段争いで負ける訳にはいかない、という闘争心の高揚のために郷田の顔を見るのだが、肝心の郷田に気迫を感じられないため、田畑の気合いが乗らないのかもしれない。
さて、昇段候補にあげた5名の中では、庄司、北島が最有力と考えている。
(以下略)
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三段リーグ出だし2連敗だった郷田真隆三段(当時)。
しかし、この後、連勝などを続け、14勝4敗で四段昇段を決めることになる。(もう一人の昇段は丸山忠久三段)
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「郷田は体を鍛えるためにテニスをやっている。日焼けした顔が他の色白の三段陣と比べると印象的に映る」
下の写真は、第2期竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局〔羽生善治五段-森下卓五段〕第2局のもので、郷田三段が記録係を務めている。
この日は9月18日。
それほど日焼けしているようには見えないので、他の三段陣が全く日焼けさえしていなかったのか、あるいは10月23日までの間に郷田三段がテニスを集中的にやってかなり日焼けしたのか、どちらかということになるのだろう。
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「ただその健康的な郷田がなぜかひ弱に見えた。以前の精悍な顔つきではないのである」
日焼けした郷田九段、というのもなかなか想像がつかない。
郷田九段といえば、やはり色白という印象が強い。
郷田三段の日焼けした顔を見慣れていなかったので、以前とは違った印象に見えてしまった、という可能性もありそうだ。
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