将棋世界1991年12月号、小室明さんの「職団戦アラカルト」より。
職団戦出場者へのアンケート。
100人アンケート2題
①10年後の名人は誰だと思いますか?
- 羽生善治棋王 38
- 谷川浩司竜王 24
- 森下卓六段 12
- 屋敷伸之六段 9
- 島朗七段 6
- 中原誠名人 4
- 無名の奨励会員 4
- 塚田泰明八段 3
羽生と谷川に票が集まったのは予想通り。関西でデータ集計すれば逆の数字になることも。森下株はここへ来て急上昇。安定感では棋界一の実績が数字にも表れた。
中原が10年後に名人なら54歳。もちろん史上最年長である。この4票は、いずれも中年から初老のファンによる回答。当然、願望も含まれる。
現在二冠王の南棋聖と、タイトル獲得5回の高橋九段に票が入らなかったのは何ゆえか。ともに谷川竜王の天敵ではないか。
森内五段の名前がないのも意外だ。タイトルがないので知名度が低いようである。ノストラダムスの大予言により人類滅亡(!!)という回答は、やはりなかった。西暦2001年の名人は果たして誰に?筆者の予想は佐藤康光五段。
②女流棋士と将棋が指せるなら誰と指したいか?
- 林葉直子女流名人 43
- 清水市代女流三段 13
- 斎田晴子女流二段 11
- 中井広恵女流王位 9
- 高橋和女流2級 6
- 山田久美女流二段 5
- 谷川治恵女流三段 4
- 長沢千和子女流三段 2
- 高群佐知子女流初段 2
- 船戸陽子女流初段 2
- 蛸島明子女流五段 1
- 宇治正子女流初段 1
- 鹿野圭生女流1級 1
40代から50代のファンは圧倒的に林葉。ここでもオジさまキラーの林葉が浮き彫りに。清水、斎田、中井はAとBクラスの実力者がぜひとも指したいという回答が。斎田は地元の神奈川県では圧倒的な人気であった。
「清水さんは終盤が強いし、中井さんは一番強そうでこわい。斎田さんは四間飛車だから何とかならないかな」
「高群さんか山田久美チャン。負けてもいいから一度は指したい」
「船戸さんが小学生の時に負けているのでリターンマッチをやりたい」
こんな意欲満々の回答もあった。この質問の回答は、ほとんど林葉と予想していただけに、女流棋界の人気上昇、ファンへの浸透が確認でき、有意義な結果であった。
(以下略)
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両方のアンケート結果とも、当時の雰囲気がそのまま出ていると言って良いだろう。
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1991年から10年後の2001年の名人は、丸山忠久四段(当時)。
丸山四段はこの頃、勝率は良かったもののデビュー2年目。たしかに10年後の名人候補には挙がりづらい。
1票も入っていない佐藤康光五段と森内俊之五段の名前を挙げている小室明さんはさすがだ。
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「女流棋士と将棋が指せるなら誰と指したいか?」
林葉直子女流名人の人気がいかに高かったかがわかる。
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「中井さんは一番強そうでこわい」
これが最大級の誉め言葉になるのか、あるいは単に恐く思えるだけなのか、ひっかかってしまう回答。
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今現在、このようなアンケートを職団戦と社団戦で行ったらどうなるのだろう。
職団戦と社団戦で同じような結果になるのか、参加者層の違いから異なる結果になるのか、興味深いところだ。