羽生善治棋王(当時)「棋士にはそれぞれ、相性の良い、あるいは悪い棋戦がある。私にもそういうのがあって、どうしても勝てない棋戦がある」

将棋世界1992年3月号、羽生善治棋王(当時)の連載自戦記「一手が敗因」(第33期王位戦、対 島朗七段)より。

 棋士にはそれぞれ、相性の良い、あるいは悪い棋戦がある。

 私にもそういうのがあって、どうしても勝てない棋戦がある。

 それは、王位戦。4勝でリーグ入りと条件は恵まれているのですが、今までほとんど1回戦か2回戦で敗退。

 今年こそはと思っていた所、私にとって研究会などでお世話になっている先輩、島七段と対戦することになりました。

(中略)

 大差で負けてしまって無念の気持ちはありましたが、今日は今日でそれなりに勉強になったし収穫もありました。

 まあ、それはそれで良しとしよう。

将棋マガジン1992年3月号より。撮影は中野英伴さん。

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「棋士にはそれぞれ、相性の良い、あるいは悪い棋戦がある」

渡辺明三冠が、冬の棋戦(竜王戦、王将戦、棋王戦)で特に強さを発揮していて”冬将軍”と呼ばれるのは、相性の良いケース。

最近の逆のケースとしては、強いて挙げれば、藤井聡太七段の棋王戦2年連続での予選敗退。

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「私にもそういうのがあって、どうしても勝てない棋戦がある。それは、王位戦」

とはいうものの、羽生善治棋王(当時)は、この翌期、王位戦の挑戦者となり、郷田真隆王位(当時)から王位を奪取している。

そして、その後は9期連続で王位を防衛。

1年後には景色が全く変わっていることもあるのが、勝負の世界だ。