羽生善治五冠(当時)がタキシードと蝶ネクタイで登場した就位式

将棋マガジン1994年11月号、萩山徹編集長(当時)の編集後記より。

 公開で行われた棋聖就位式、羽生棋聖は黒のタキシードに蝶ネクタイというスタイルで登場。就位式では和服姿を見慣れていたせいか、とても新鮮な感じを受けました。

 会場には女性ファンも目立ち、ちょっと話をしただけで、その熱が伝わってきます。本誌も愛読していると聞いて、嬉しくなりました。

 それにしても、都内からだけでなく、遠方から参加している人もいて、女性の行動力はスゴイッと感心させられました。

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近代将棋1994年11月号、炬口勝弘さんの「アングルショット’94」より。

タキシードでさっそうと 第64期棋聖戦就位式

「永世棋聖まであと2期。今後も自分にとってもファンの方にとっても面白い内容の将棋をつくっていきたい」(羽生棋聖のあいさつ)

 お祝いには角川書店の角川歴彦社長(元奨励会員)も駆けつけた。乾杯の音頭をとるのは囲碁の大竹英雄十段。(9月6日の東京永田町の「キャピトル東急ホテルで」)

近代将棋1994年11月号より、撮影は炬口勝弘さん。

近代将棋1994年11月号より、撮影は炬口勝弘さん。

角川歴彦社長。近代将棋1994年11月号より、撮影は炬口勝弘さん。

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島朗竜王(当時)が第1期竜王戦就位式にタキシード姿で現れ、列席者を驚かせたという例はあるが、棋士がタキシードを着るのは非常に珍しい。

当時の棋聖戦は年に2回行われており、そうなると就位式も年に2回行われることになる。

羽生善治五冠(当時)にとっては棋聖連続3期目。なおかつファンも参加する就位式なので、新しいことをやってみようという試みだったのかもしれない。

タキシードを着こなすのはなかなか難しいことだが、羽生五冠はなかなか似合っている。

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和服もタキシードも正装だけれども、どんなに自由な社風の会社でも、職場に着ていったらほとんどの確率で「えっ………」と思われるだろう。

たしかに、タキシードは夜の正装なので、日が明るいうちから夜の雰囲気を漂わせることになってしまう。

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角川書店の角川歴彦社長(現・株式会社KADOKAWA取締役会長)は、奨励会初等科(現在の研修会に近い機関)に在籍していた。

この1994年の20年後、KADOKAWAはニコ生を運営する株式会社ドワンゴと経営統合をして、将棋界と関わりを持つようになるのだから、さまざまな意味で感慨深い思いがする。

角川歴彦&中原誠 対談「我ら高柳一門の兄弟弟子」