近代将棋1996年6月号、中井広恵女流王将(当時)の「棋士たちのトレンディドラマ」より。
見た、見た? 先日の『平成教育委員会』。あー恥ずかしい。クイズって本当に苦手だ。正直言ってこのお話をいただいた時、どうしようかと迷ったのだが、
「レギュラーのタレントさんとペアなので、その方にまかせておけば大丈夫ですよ」。というので、おもいきって、出てみることにした。
ところが、数日後、何故か石田先生から電話をいただいて、
「平成教育委員会に出てくれないかというんだけど、中井さんも出るんでしょ。あんたクイズ得意? 得意ならあなたにまかせればいいから、私も出ようかと思ってるんだけど」。とおっしゃる。
えっ、話が違うじゃない。タレントさんとのペアじゃなかったの?
私に期待なさってるぐらいだから、石田先生には、ちょっと期待できそうもない。(先生スミマセン)
実は石田先生も、ファンの方々には、「折角のチャンスだから、出る一手」と言われ、一方家族の方には、「恥をかくからやめて」と言われ出演を迷っていたよう。
「先生、大丈夫ですよ。以前より問題が簡単になったみたいですし、何とかなりますよ」。と申し上げると、
「あなたは楽観的でいいねぇ」
出演する前からボヤかれている。
あの……先生、そういう私が一番心配してるんですけど……。
結局それから先生より3回もお電話をいただいたのだった。
収録日当日、石田先生は1時間も前にスタジオ入りし、一番ハリキッてらっしゃったこともつけ加えておこう。
過去、この番組には米長先生、谷川先生がお出になって、優秀な成績をおさめられている。(谷川先生は優等生のブレザーまでいただいている)
そのお二人が培った棋士のイメージをどうやら一気に崩してしまったらしい。(初めからお笑い系だったという話もあるが)
スタッフの期待通り、石田先生、見事に石田節を披露してくださった。
放送をご覧になった方はおわかりになると思うが、電話の問題では、受話器を取らずにボタンを押してみたり、音楽の問題では、たけしさんがルールを説明しているのに、一人ヘッドフォンで耳をふさいでいて、
「石田君は聞こえてるんですかねぇ」
とつっこまれたり。
トドメは、早押し問題。ボタンを押すと、手のひらの形をしたボードが上がるしくみになっているのだが、いくら押しても上がらない。
こわれているのかと思ったら、隣で石田先生がおさえているのである。これじゃあいくら押しても上がらないわけだ。
それにしても、この番組、見るとやるでは大違い。普段、
「こんな問題もわからないの?」
なんて言いながら見ていたが、いざ自分がその場に立つと頭が真っ白になる。
Q.歩行者用の信号の絵を描きなさい
なんていう問題も、いつも車の運転をしていて見なれている筈なのに、「あれ? 赤が上だっけ、青が上だっけ」
Q.日本の政党を5つ言いなさい
という問題も、「社会党って、確か社会民主党に変わったんだよなぁ。スポーツ平和党ってあったな。あれ、今はもう無いんだっけ?」
なんて考えてる間に時間が過ぎてゆく。お肉も過ぎてゆく。この問題に答えられると、スキヤキのお肉をいただけたのだ。
放送を見ていた娘に、
「ママ、答えられなかったから、食べられなかったんじゃないの?」
うっ……娘に言われるとは……。
「でも、うちで食べればいいよね」
ジーンときた。
総合結果は、チーム中下から3番目。でも、棋士の意外な一面?が見れてよかったよね、ね、……そういうことにしておこう。
クイズ番組といえば、名人戦挑戦中の森内八段も新しくスタートするクイズ番組にお出になっていたなぁ。
佐藤八段もテレビ東京で記憶力の勝負をしてらしたし……。
結果? 書かないほうがいいみたい。
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「レギュラーのタレントさんとペアなので、その方にまかせておけば大丈夫ですよ」
この時代なら、「レギュラーのタレントさんとペアになりますし、そのタレントさんがいろいろやってくれますから全然OKですよ。ぜひ出演をお願いします。中井さんに出ていただければ視聴者の方も絶対に大喜びしてくれると思います。なんというか、そこはパーッと」のような口説き方だったのだと考えられる。
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「えっ、話が違うじゃない。タレントさんとのペアじゃなかったの?」
世の中はこういうものかもしれない。
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「あなたは楽観的でいいねぇ」
ボヤきの王道と言っても良い言葉。
この時の石田和雄九段の声と口調までも頭の中に浮かんでくる。
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「石田君は聞こえてるんですかねぇ」
期待通り、石田九段がいい味を出している。
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「いざ自分がその場に立つと頭が真っ白になる」
この頃の『平成教育委員会』で出題される問題は、国・公・私立中学入試問題、一般企業入社試験、公務員試験から出題されるとともに、番組オリジナル問題もあった。
難しすぎる問題であれば、他の人もたくさん間違うだろうと腹をくくって落ち着いて解答できるが、小学生が解ける問題だと言われると焦ってしまう。
とはいえ、小学生が解ける問題、実際に出題された問題を見てみると、かなり難しいものもある。番組オリジナル問題も難しい。
→「平成教育委員会」で実際に出題された問題集(前編)(トイダス)
まあ、簡単な問題ばかりでは番組にならないわけで、大人が苦しむところを見せるのが狙いのひとつの番組だったのだろう。
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「結果? 書かないほうがいいみたい」
まさしく「ハチの一刺し」を思わせるような発言。可笑しい。