週刊新潮の名物エッセイだった山口瞳「男性自身」。 今週「井口昭夫 将棋観戦記選集 上」のことを取り上げたが、井口さんが第1回将棋ペンクラブ大賞を受賞したときの贈呈式の雰囲気が、週刊新潮1989年2月16日号の「男性自身」で描かれている。 === 一月二十八日(土) 風が寒い。府中JRA。六時から第一回将棋ペンクラブ大賞授賞式に出席。 大賞は高柳敏夫先生の「愛弟子芹沢博文の死」と毎日新聞井口昭夫記者の「加藤一二三九段対米長邦雄九段のA級順位戦観戦記」。於新宿京王プラザホテル。 選考委員は中原誠名人と色川武大氏と僕の三人。この授賞式とパーティは、極端にいうと中原誠やその他の棋士と同じ部屋で同じ空気を吸っているだけで嬉しくて仕方がないといった連中の集まりである。楽しいといえば楽しいし異様といえば異様。とにかく加藤治郎、原田泰夫両先生を筆頭に出席者全員が笑ってばかりいる。 === 平成になって22日目のことだ。 私が将棋ペンクラブの会員になったのは1996年の年末のことだが、私が将棋ペンクラブの存在をはじめて知ったのが、この文章でだったと思う。 |