島井咲緒里女流初段「兄の結婚」

結婚式で、新郎の妹が流す涙。

「お兄さん、いい人と一緒になれて良かったね」

というわけではないことを初めて知る。

近代将棋2006年1月号、島井咲緒里女流初段の「女流棋士の一週間」より。

 兄の結婚式のため、実家高知へ里帰りしました。何を隠そう、私はかなりのブラコンである。昔から、お兄ちゃん大好き大好き! と惜しみない愛を捧げていた。何故かって? それはカッコいいからである!

 私と母だけでなく、親族のおばちゃんもみな、兄のことをキムタクにソックリだと信じて1ミリも疑ってないのである。親族そろって兄バカなのであった。そのキムタクが、結婚するなんて! 私は迷わずこう言った。「断固反対!」全く以って迷惑な妹である。もちろん反対なんて馬鹿げてる。心の中ではわかっている。

 式場に着き、控え室に入ると、やはり女性陣は少しさびしげ。キムタクもついに・・・という思いが伝わってくる(思い込み)。あんたらほんまにええんかっ! 今ならまだ間に合う! と胸ぐらをつかみたい衝動を抑える。ええ、私も大人ですから。わかってますよ、間に合うわけないってことくらい。

 いよいよだ。チャペルの席に着くと、緊張感がみなぎっている。すでに涙ぐむ私、女性陣。そして新郎新婦の入場・・・。二人を見た瞬間、ぶわっと涙が溢れた。

「あぁ、本当にお兄ちゃんを取られちゃう・・・!」(注・もともと私のではない) よっぽど二人の腕の間に割って入ってやろうかと思ったが、さすがに私も理性がある。ついに観念し、「お兄ちゃん、さよなら・・・」そっと心の中でつぶやき、お兄ちゃんが幸せでありますように。心から祈ったのでした。

 ついつい妄想が行き過ぎ、マンガの主人公のような気分でストーリー作りをしてしまいましたが、決して兄嫁をいじめたりしないのでご安心下さい(笑)。お嫁さんと仲良くやってます。

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同じ頁には、お兄様の結婚式の時の写真が載っている。

キムタクにはそれほど似ていないと思うが、島井咲緒里女流初段のお兄様だけあって、相当な美男子だ。

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兄と妹というと思い出すのが、山崎豊子原作「大地の子」。

太平洋戦争の敗戦によって、満州で残留孤児となった主人公・陸一心が、中国人養父母への愛情と日本の実父との愛憎に揺れながらも、文化大革命の荒波を越え、日中共同の製鉄プラント事業を完成させるまでの物語。

1995年にNHKでドラマ化された。

とにかく泣けるドラマで、私が1995年に流した涙だけで、それ以前の10年間に流した涙の総量を上回っているのではないかと思えるほどだった。

制作者までが撮影中に泣いてしまっていたドラマだ。

兄と妹との関わりは、この物語の中盤の最も大きな山場。

陸一心(上川隆也)の妹・あつ子(永井真理子)は、5歳のとき兄と引き離され、その後売られて貧しい中国人の農家に嫁ぐが、家畜のように働かされ病に冒される。

彼女は5人の子どもを全て死産し、夫を亡くし、余命いくばくもない病気に罹っていた。

(原作はもっと酷い状況だったが、テレビではソフトな設定になっている)

一心の妹であるかもしれないと巡回医療隊の看護婦である妻(蒋文麗)からの知らせを受けた陸一心は、妹・あつ子(張玉花)の住まいへ行く。

北京近郊の寒村。姑と一緒に暮らしており、張玉花は巡回診療所を一度は訪れたものの、農作業をしなければならないということで、病にもかかわらず仕事を続けた。

病床の妹・あつ子。

35年間生き別れになっていたので、お互い大人になった今では顔の判別のつきようもない。

妻の江月梅が張玉花から聞いてメモしていた中国語ではない言葉、「タアマ」、「シイロウ」、「カウジャン」。

陸一心は張玉花に、『「タアマ」、「シイロウ」、「カウジャン」?』と聞いてみる。

張玉花は、中国語で、『そうではない、「ターマ」、「シーロ」、「カウチャン」』と答える。

これらの言葉を聞いて、陸一心(日本語名:松本勝男)は、ソ連軍に襲われて以来ほとんど失っていた過去の記憶を取り戻す。

『「ターマ」ではない「タマ」だ。家で飼っていた猫だ。「シーロ」じゃない「シロ」という犬だ。「カウチャン」じゃない、「かっちゃん」だ。僕の名前だ』

あつ子(張玉花)は大きく目を見開く。

「カウチャン、、、カッチャン、、かっちゃん・・・」

数々の苦難を乗り越えてきた陸一心が、35年ぶりにようやく巡り合えた妹。

妹は日本語をほとんど覚えていない。

妻の尽力により人民病院に入院したあつ子。

わずかな間だったが、あつ子に日本語教えたりして少しでも一緒に過ごす日々が続いた。

しかし様態は急変し、北京近郊の寒村へ戻される。

そして妹の死。

最後の言葉は「・・・ありがとう・・・・・・」だった。

妹の死の翌日に、陸一心は実の父親が松本耕次(仲代達矢) であることを知る。

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その後、陸一心は日本へ出張することとなるが、「日本に帰りたい」と言っていた妹のあつ子の幻影が飛行機の中に現れる。

綺麗に化粧をして綺麗な洋服を着た笑顔のあつ子、、、どうしようもなく涙が流れてしまう。

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主人公の上川隆也さん、実の父役の仲代達矢さん、薄幸そうな母親を演じさせたら右に出るものがいなかった故・田中好子さん、とても可哀想な妹を好演した永井真理子さん、最高だった。

中国側の俳優としては、陸一心の養父役の朱旭さんの演技が素晴らしく1996年のギャラクシー賞を受賞している。

また、陸一心を深く理解し妻となる江月梅を演じた蒋文麗さんも絶妙だった。

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湯川恵子さんと初めて会ったのが1996年のことだった。

何度も飲んでいるうちに、私が「大地の子」の話をしたのだろう。

「あっ、朱旭さんって知ってるよ。囲碁の関係で中国に行った時、一緒に碁を打ったよ。とても素敵な人だった。有名な俳優なんだってね」

湯川恵子さんは「大地の子」をみていなかったという。

今日の記事を書いてあらためて思ったことだが、今度、湯川家に行ったら、「大地の子」を博士さん・恵子さんと一緒に観てみたいと思っている。

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