信念の棋士

将棋世界2002年6月号、朝日オープン将棋選手権戦決勝五番勝負第1局(杉本昌隆六段-堀口一史座五段戦)「独自の研究派と信念の棋士の対決」より。解説は鈴木大介七段(当時)。

-鈴木七段から見て、堀口五段は1歳年下の同世代ですが、奨励会時代からよく知っているそうですね。

鈴木 堀口くんとは、奨励会に入る前から指していました。奨励会時代は、ゲームセンターに行って遊んだこともあります。彼は根が真面目で、将棋の勉強が本当に好きですね。それも、これにて良しぐらいではすまないほど徹底的にやります。

(中略)

 堀口くんはまさに信念の棋士という感じがしますね。それは時間の使い方にも現れています。

(中略)

 ただ、堀口くんは勝負には淡白ですね。相手と戦っているというよりも、自分と指しているという感じです。1局1局の勝ち負けよりも、負けても内容が良ければ満足と思っているんです。だから相手のミスは期待していないし、やってほしくないと思っています。負けを承知でくそ粘りはしません。粘るときは自分が勝ちと思っているときです。順位戦の対局で、2時間も考えた末に、突然投了したこともありました。とにかく、相手が強ければ強いほど燃えるタイプなんです。

-なるほど。堀口五段が大物食いと呼ばれるわけがよくわかりました。

鈴木 堀口くんはたまに競馬やゲームで遊ぶようですが、穴を専門に買うなど、独特のこだわりを持っていますね(笑)。ある日、競馬場で彼とばったり会ったとき、5万円貸してくれと言われたので渡したら、競馬場では5千円ほど買っただけで、残りはゲームセンターの競馬ゲームに使っていました。きっと、生の競馬では味わえない面白さがそこにあったんでしょう(笑)。

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5万円のうち、5千円だけ馬券を買って、残りをゲームセンターの競馬ゲームに使う。

コーヒーが名物の店でアイスティーを飲むような、

蕎麦屋で中華そばを頼むような、

甘味処でカレーライスを食べるような、

北海道へ行って沖縄料理を食べるような、

神戸のステーキ店でタコのステーキを食べるような、(これはアカシヤ書店の星野さん)

香港の日本料理店で刺身定食を食べるような、

イギリス料理を食べるような、

ランジェリーパブの浴衣祭りのような、

そのような感じがする。

なかなかできることではない。

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宮崎のシーガイアでは、海水浴場の手前に大型屋内遊泳施設(人工波のプール)を作ってヒットしたという事例もある。

シーガイアの大型屋内遊泳施設も、5万円のうち5千円だけ馬券を買って残りをゲームセンターの競馬ゲームに使う感覚と似ているのかもしれない。