棋士から必ず聞かれること

私が生まれて初めて観戦記を書いたのは、2005年度NHK杯将棋トーナメント2回戦の郷田真隆九段-先崎学八段戦。解説は北浜健介七段。

控室でそれぞれ挨拶をする。

先崎八段に名詞を渡した時に交わされた会話。

「観戦記を書かれるのは何回目ですか?」

「は、はい。今回が初めてです。変な文章なら昔近代将棋で書いていたことがあります」

「将棋はどれくらい指されますか?」

「強い三段、弱い四段と言われています」

スタジオへ向かう途中、千葉涼子女流王将(当時)とも同じ会話になった。

そして、対局終了後の郷田九段とも全く同じ会話になった。

その次に観戦記を書いたのが2005年度NHK杯将棋トーナメント準々決勝の森下卓九段-三浦弘行八段戦。

対局終了後の三浦八段との会話。

「観戦記を書かれるのは何回目ですか?」

「今回が二度目です。初めて書いたのがNHK講座の先月号に載った郷田-先崎戦です」

「将棋はどれくらい指されますか?」

「強い三段、弱い四段と言われています」

その次に観戦記を書いたのが2006年度NHK杯将棋トーナメント1回戦の島朗九段-福崎文吾九段戦。

控室での島九段との会話。

「観戦記を書かれるのは何回目ですか?」

「今回が三度目です。今まで書いたのは郷田-先崎戦、森下-三浦戦です」

「将棋はどれくらい指されますか?」

「強い三段、弱い四段と言われています」

—–

初めて見る顔の人が観戦記を担当する場合、「観戦記を書かれるのは何回目ですか?」と「将棋はどれくらい指されますか?」の質問は棋士にとっての定跡なのだと思った。

棋譜の解説などが必要な場合、棋力に合わせて行おうという背景もあるのだろう。

それにしても、4人の棋士と1人の女流棋士から全く同じ質問があったというのは、有り難いとともに、とても面白く感じた。