渡辺明四段(当時)の決断

竜王戦第4局は渡辺明竜王が勝って3勝1敗とした。→中継

102手目の△8四香打など、いつものように踏み込みが良く、渡辺竜王はどんどん強くなっているという感じがする。→棋譜

そのような渡辺竜王の高校3年の時の話。

近代将棋2002年9月号、渡辺明四段(当時)の「18歳高校生棋士 トップを狙え!」より。

 暑い夏が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。僕は高校生活最後の夏休みを過ごしています。高3にもなると、宿題は出ず、時間がたくさんあるので、有意義に過ごしたいと思っています。

 先日、大学には行かないということを担任の先生に報告しました。4月ごろから迷いに迷い、やっと決断しました。この間、棋士の先輩方をはじめ、多くの方々にアドバイスをいただき、とてもうれしかったです。ありがとうございました。

 大学に行きたいという気持ちが出てきたのは4月ごろ。それまでは大学に行くつもりは全くありませんでしたが、高3になって周りの友達が大学の話をする事が多くなってくるにつれて、自然と大学を考えるようになりました。

 全国から様々な目的を持った人が集まる大学は自分にとっては魅力を感じる場所であり、「いろんな人と接することによっていろんな考え方ができるようになるよ」と言ってくださった方が何人かいました。

 確かに、将棋以外の世界も見てみたいという気持ちはあります。ただ、「これを勉強するんだ」という明確な目標が自分にはないような気がしました。やはり大学は勉強の場なので、あまり勉強する気がないのなら、行かないほうがいいだろうと思い決断しました。先生は「そんだけ悩んで出した結論なんだから、後で行けば良かったと後悔することはないと思うよ、大丈夫」と言ってくださりました。

 今回の件は今までのどんなことよりも悩みました。行こうと決めた次の日に行かないと決める、なんてことが何回もありました。これだけ悩んだことで気が付いたことも幾つかあり、大学進学を考えて良かったと思っています。

 周りの友達は受験に挑んでいくわけなので、何もできないかもしれませんが、応援していこうと思っています。

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高校3年にして、非常に立派だ。

担任の先生も素晴らしい。

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思い起こせば、私も大学に入るまでは「これを勉強するんだ」というものがあった・・・

子供の頃、テレビで米国ドラマ「宇宙家族ロビンソン」を見て宇宙が大好きになった。

宇宙を好きになる人は、宇宙飛行士を夢見るタイプと天文学者に憧れるタイプに二分されるというが、私は天文学者になって第二の地球を探したいと思った。

巨大望遠鏡を持つアメリカの天文台に勤務するのが夢だった。

しかし、中学1年のある日、夜空を見上げると、どれがオリオン座でどれが天の川なのか全くわからない自分に気が付く。

「こんなことでは天文学者には向いていないのではないか」と思い、”第二の地球を見つけられるような望遠鏡を設計・開発する光学技術者”になろうと気持ちを切り替えた。

光学を勉強して光学関係の会社に入る、のが夢に変わった。

高校に入学して、大学の志望は地元の国立大学の工学部応用物理学科か東京の私立大学理学部の応用物理学科と決めていた。

しかしユルイ私のことなので、真面目に大学入試に向けた勉強を開始したのが高校2年の秋から。

物理の基本は数学、最初に、中学まで得意だった数学を立て直そうとして数学の勉強に集中的に取り組んだ。数学の成績は半年でみるみる伸びた。伸びるともっと楽しくなり更に数学を勉強するようになる。

この頃は、90点取れる得意科目を100点にする努力するよりも、40点の不得意科目を70点に伸ばすほうが実戦的であることを意識していなかった。

結果として受験直前、数学と現代国語は良い成績だったものの、物理・化学・日本史は惨憺たる成績だった。

それでも当初の目標通り、地元の国立大学応用物理学科と東京の私立大学応用物理学科を受験したのだがら無謀というほかはない。

ちょうど、東京の私立大学の同じ学部に、数学と英語だけで受験できる応用数学科があったので、そちらも腕試しで受けてみた。

結局、受かったのは応用数学科のみ。腕試しに救われた形だ。

「数学系の学科だから女性比率が高くて、かえって楽しいかもしれない」と一番初めに思った。

この時点で、望遠鏡を開発しようという子供の頃からの目標は一気に消えてしまった。

人生、このようなことの繰り返しかもしれない。

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