近代将棋1995年9月号、中井広恵女流五段(当時)の「棋士たちのトレンディドラマ」より。
先日、主人が
「やっちゃん(S前竜王)が酔った勢いで、人妻のお尻をさわったんだってよ」と。
「うそー?! いくら酔ってたって、あのマジメな彼がそんなことしないでしょう」
「だって○○君がそう言ってたよ」
後日、聞いてみると、実はさわったのはお尻ではなくお腹。それも、その人妻というのが妊婦さんで、お腹の子が頭が良くなるようにさわってほしいと頼まれたらしい。
そんなご利益が彼にあるのかどうかはわからないが、それなら納得。
それにしても、なんて噂とはいい加減に伝わるものか。
(中略)
うまく伝わらないのは噂話だけではない。
女流王将戦第二局を終えてのインタビューで、
「これで一勝一敗のタイになったわけですが・・・」
という記者の方の質問を受けて、私は、
「今月8局も対局がついてますので、8局全部指せるように頑張ります」
と言った。
「全部勝つつもりで?」
聞かれたので、できればとか、そうですねとか答えたのだったが、新聞に載った私のコメントは、
「全部勝つつもりです」
になっている。
8局全部指せるようにというのは、この五番勝負全局戦いたいというつもりで言ったのに、何と強気なセリフになっているのだろう。
まあ、私の性格から、これくらいのこと言っても不思議じゃないというので書かれてしまったのだろうけど、文章になるとニュアンスが違ってとられてしまうものだ。
(以下略)
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S前竜王とは佐藤康光九段のこと。
たしかに、妊娠中に棋士にお腹をさわられたら、頭の良い子が生まれてくるような感じがする。
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1995年のこと。
仕事で田中寅彦九段とお会いすることがあった。
その日は日本橋東急の将棋まつりがあった土曜日。
帰りに、私としては珍しく、神田のパチンコ店に寄った。
そうすると、始めて間もなく打ち止めになった。
プロ棋士に会った直後は勝負運のようなオーラが身に付いて勝てるのかなと感じた。
その次に田中寅彦九段との打ち合わせのあった日の仕事帰り、試しにパチンコ店に寄ると、また打ち止めになった。
またその次に田中寅彦九段と会った日の仕事帰りパチンコ店に寄ると、また打ち止めになった。
4度目からは通常モードに戻ってしまったが、プロ棋士の見えない力が何かあるのではないかと感じた時だった。