森内流と郷田流の違い

近代将棋1995年2月号、「棋界フィールドワーク 平成七年の棋界展望」より故・田辺忠幸さんと故・小室明さんの対談。

羽生七冠誕生の前年の棋界の雰囲気がわかる。

小室 いま盛んに羽生の7冠が取り沙汰されてるけど、僕はその前に誰が羽生に対して高らかに宣戦布告するのか注目している。中原に対する加藤のような存在だね。

田辺 誰でしょうかねえ。

小室 ま、谷川は置いておいて、やっぱり佐藤康だろうねえ。「羽生君はこわくない」なんて口が裂けても言わないタイプだけどね。

田辺 ただ羽生と佐藤康のこの1年の充実度はえらい違う。佐藤が何度か名もなき雑兵に討ち取られるということは、まだ羽生の域に達していないということだ。竜王の免状を書くことに忙殺されて調子を落としているようではまだ甘いぞ。

小室 ウーン、それにB2を抜けないといかんし、とりあえず竜王戦のカド番脱出で何かつかんでほしいな。

小室 佐藤康とともに打倒羽生の最短距離につける若手は郷田と森内なんだけど、この2人の動向が平成7年の重要なテーマだと思う。

田辺 おう、来たな。

小室 郷田はね、内藤國雄タイプなんだ。内藤は王位と棋聖を2回ずつ獲得したけど、あとは王将戦の挑戦者に1度なったきりで、他のタイトル戦には1度も出てこなかった。郷田も王位戦と棋聖戦だよね。縁のあるのは。

田辺 ナルホド。本戦リーグ、トーナメントが短い棋戦だな。

小室 つまり短期決戦型で、一発タイトルを狙ってくるんだ。

(中略)

田辺 深浦もそのタイプだな。彼もホームランを狙っている。

小室 ただ弱点もあるんだ。羽生に聞いたんだけど、郷田は奨励会の頃から連勝連敗型たっだと言うんだ。郷田は相手に関係なく自分の主義主張を貫くんだよ。一直線に鋭く攻めて将棋を決めにくるから取りこぼしも多い。

田辺 森内は正反対だな。年間を通じて勝率が高い。順位戦タイプの男だよ。

小室 そう。森内はどの将棋も同じ比重で指すんだ。そのため安定性は非常に高いんだが、郷田のような爆発力に欠けるからタイトル挑戦にまでは届かない。将棋も重厚で、相手に手を渡すような指し方をする。若さに似合わず老獪なんだ。

田辺 森下が似てるな。森内に。

小室 そうだね。だから戦国武将にたとえるなら郷田は信長タイプ、森内は家康タイプだと思うよ。

田辺 その通り。でもさ、いくら家康タイプと言ったって森内もこの1年でタイトル戦に出てこなきゃだめだぜ。今のままだと可能性だけの男で終わってしまう危険性もある。

小室 森内も25歳になるからね。だけど棋士に言わせると、それでも将来性は森内が郷田を上回るという意見の方が強い。僕は郷田の方が買いなんだけどね。まあ2人の将棋の輪郭がこの1年で見えてくると思うな。その意味でも重要な年ですよ。

田辺 軍配はいずれに上がるかとな。でもさ小室君よ、郷田はいい男だな。俺に言わせると所作すべてが格好いいわけよ。

小室 扇子さばきは格好いいな。

田辺 それとな、駒をつまんでパチリとやる時、小指が曲がるんだ。あの感じが色っぽいんだ。

小室 こりゃすごい入れ込みようだ。ちょっと気持ち悪いけどね。田辺さん、冷酒が効いてきたんじゃないの(笑い)。でもね、田辺さんを含めて初老の紳士に郷田は抜群の人気があるね。

田辺 若い娘ばかりじゃないか。

小室 いや、郷田は芸者衆にはモテモテと思うけど、若い女の子にはどうかな。あまりに完璧すぎてつけ入る隙がないんじゃないかな。20代から30代のOLにはね、中田宏樹や泉正樹のような、ちょっと陰りがあって渋めの男が、意外にといっては失礼だがモテるんだ。知り合いにそういう女性がいる。

田辺 若い娘の心理はわからんな。俺の娘も34歳だけどな。

小室 郷田も、もちろん人気はある。彼はスピード狂なんだ。

田辺 そうそう。今は車の運転はしないけど、いずれレーシングカーに乗ってみたいと言ってた。F1が好きなのよ。そこらにスター性がある。

小室 F1狂と短期決戦型というのは相通ずるものを感じるぞ。そうだ、長期型の森内には昔の十段戦リーグが向いてるよ。

田辺 十段リーグがあったら森内は強い。おっ、それにスピード狂で思い出したけど、郷田が羽生に勝った将棋は全部百手以内。王位戦の3勝、日本シリーズも含む。郷田の長考が羽生にうつるようなところが面白いんだ。

(つづく)

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森内名人が七段、郷田九段が五段の時代。

よくよく考えてみるとかなり大胆な対談だ。

田辺忠幸さんは自らを”怪老”や”将棋界の小言幸兵衛”と称していた。

小室明さんは元PR会社勤務のライター。2001年に週刊将棋「渡辺明物語」を連載中に病気で亡くなっている。

「渡辺明物語」は2001年将棋ペンクラブ大賞一般部門佳作を受賞した。

「渡辺明ブログ」では、渡辺竜王と後藤元気さんが小室さんが亡くなった数年後も小室さんの家を訪ね、竜王獲得や新人王獲得などを遺影に報告している様子が書かれている。

小室さんに報告。

一年振りの訪問。

竜王戦第5局対局場「八戸パークホテル」

竜王戦第5局は、青森県八戸市の「八戸パークホテル」で行われる。→中継

八戸パークホテルは八戸市の中心部にあり、ホテルは西洋建築のもつ合理性と日本独自の落ち着きと気品をプラスした理想的な設計となっている。4500平方mの四季を楽しめる純日本庭園もある。

〔ホテル内のレストラン〕

ホテル内にはレストラン「アゼリア」がある。

「アゼリア」では、和食・洋食・中国の日替わりメニュー(990円)が人気。

和・洋・中の名料理人がそれぞれ腕を振るう。

ちなみに、今日と明日のメニューは次の通り。

1日 (火) <洋食>白身魚のポワレ オニオンソテー添え

2日 (水) <中国>ガーリックポークと秋野菜のピリ辛炒めセット

〔昼食予想〕

そういうわけで、どのような料理が出てきても不思議ではない。

最も予想の難しいパターン。

予想は控え目で次の通り。

渡辺明竜王

一日目 五目焼そば

二日目 カツ丼

丸山忠久九段

一日目 うな重

二日目 うな重

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青森には、大間・三厩マグロ、ニンニク、リンゴ、牛乳味噌カレーラーメンじゃっぱ汁せんべい汁など、数多くの名物がある。

マグロを中心とした海鮮丼なども候補として考えられるが、今回は予想からはずした。

ガーリックポーク丼のようなメニューがあれば面白いのだが、タイトル戦でニンニクは出現しないものと思われる。

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第4局二日目の丸山九段の朝食「ふぐちり」が大きな話題となった。

第5局でも丸山九段の二日目の朝食が注目される。

バトルロイヤル風間さんの今週の週刊将棋の4コマ漫画に”ふぐちり”と”すき焼き”が出てくるが、個人的には朝食での「すき焼き」も期待したいところだ。