1989年、島竜王が谷川名人に頼んだこと

将棋マガジン1990年2月号、神吉宏充五段(当時)の「へえへえ何でも書きまっせ!!」より。

 十一月二十七日、月曜日。衛星放送「囲碁将棋ウイークリー」出演の帰り、そのまま竜王戦第5局の対局場である下呂温泉に立ち寄るために、名古屋で途中下車した。

 その名古屋で谷川名人と待ち合わせ。名人も一緒に下呂温泉へと向かうのだ。

「今回は仕事ですから」とニッコリ。竜王戦は旭川をのぞいて全局顔を出していた名人だが、仕事で行くのはこれが初めて。

「二人の戦いぶりを勉強するために」とはプライベート観戦の弁だが、筆者はこの名人の一連の行動のすべてを読み切った。

 常に羽生の勝敗の行方を気にするそのアツイ視線はタダ仲ではない。そう、谷川名人は羽生六段のファンだったのだ! 別名オッカケ。(この仮説が立証される日は近い)

 さてその羽生ファンクラブ第一号の名人、名古屋に着くや否や、レコード店を探し始めた。

「どないしたん?」

「いえね、島竜王に頼まれ物がありましてね」

 聞けばユーミンの新譜のCDらしい・・・。

「発売されたのが先週の土曜日だから、多分あると思うんですけど」

不安そうな名人を見て、私の目は光り輝き「はっはっはっ、甘いで。ユーミンが3日も残っとるかいな」

 読み筋通りだった。どこのレコード店へ行っても、売り切れですとつれない返事。

「しょうがないですね。島さんにはなかったと伝えるか・・・」

 場所は変わって下呂温泉。名古屋から2時間ほど揺られて山奥の湯けむり漂う下呂に着いた。さすがに三大名泉と謳われる素晴らしい温泉街だが、ほとんどが土産物店と旅館なので、1時間ほど名人と散歩をしても神戸の飲み屋街のようなところは見当たらない。

 ふとそんな時、小さな商店街を歩いて見上げると、小さなレコード屋さんがある事に気がついた。

「ひょっとしたらユーミンがあるかもしれへんなあ」私は笑いながら名人を見た。

「入ってみますか」

 二人はふらりと店の中へ入った。人の良さそうなおばさんがレジの前に座っている。

 絶対ないと思いながらもこう尋ねた。「あのう、ユーミンの新譜ありますか?」

 こともなげにおばさんは答えた。

「へえへえ、入ってますで」そう言ってダンボール箱を開くと、そこにはどっさりとユーミンの新譜が。

「・・・・・・」声がなかった。

 読者の皆さん、ほしいCDがない場合、下呂に行きましょう。

(以下略)

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調べてみると、この時、島竜王から頼まれて谷川名人が探していた松任谷由実さんのCDは、1989年11月25日発売の「LOVE WARS」だったようだ。

LOVE WARSLOVE WARS
価格:¥ 2,500(税込)
発売日:1999-02-24

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私は松任谷由実さんの曲についてはあまり詳しくないが、一番好きな曲は「真夏の夜の夢」。


YouTube: 真夏の夜の夢 松任谷由実

今見ると、ものすごく華やかだ。

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「真夏の夜の夢」は、1993年のTBS系ドラマ『誰にも言えない』の主題歌だった。

出演は、賀来千香子、佐野史郎、山咲千里、羽場裕一、そのまんま東、中村綾、野際陽子、など。

非常に高い視聴率を獲得した番組だった。

誰にも言えない DVD-BOX誰にも言えない DVD-BOX
価格:¥ 23,940(税込)
発売日:2012-02-24

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主演の賀来千香子さんは、雑誌「JJ」のモデルとして活躍し、その後女優デビューした。

私は、賀来千香子さんがJJの表紙に出ている頃から注目をしていた。

とても私の好きなタイプで

・・・

話が脱線してしまったようだ。

神吉五段(当時)が書いているように、この時期、谷川名人は羽生六段を非常に強く意識しはじめていた。

近いうちに自分に立ち向かってくる相手として。

当時、谷川名人が羽生六段をどのように思っていたか、などについて、明日または明後日から触れていきたい。