昨日、NHKの朝の連続テレビ小説「あまちゃん」の故郷編の総集編が放送された。
見逃している回が多いので、このような総集編はとても有り難い。
なんといっても『あまちゃん』は、魅力的なストーリーに加え、能年玲奈さんの太陽のような明るさ、宮本信子さんの東北のおばあちゃんになりきった演技、小泉今日子さんのカリスマ的な存在感、古田新太さんと松田龍平さんとピエール瀧さんの妖しげな雰囲気、脇を固める個性溢れる俳優・女優陣など、非常に気になる面白いドラマだ。
個人的には、小泉今日子さんと薬師丸ひろ子さんが出演しているのが嬉しい。
今週は、小泉今日子さん演じる春子の、アイドルを目指していた1985年の隠された秘密が明かされるらしい。
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1985年といえば、小泉今日子さんは自身の1985年を振り返り、TBS系ドラマ「少女に何が起ったか」を思い出すに違いない。
「少女に何が起ったか」は、1985年1月から3月まで放映された大映テレビ制作のドラマであり、小泉今日子さんにとっては初の主演作だった。
ストーリーは、北海道の漁村で育った少女が母の死を機に、自分の出生の秘密を確かめるため上京。天才ピアニストであった亡き父の娘である証を求めてピアニストを目指すというもの。
このドラマの名物は、なんといっても、深夜0時になると必ず現れて小泉今日子さん演じる野川雪を悩ませる刑事役の故・石立鉄男さんの演技。
石立さんの「この薄汚いシンデレラめ!」という定番の台詞は、今聞いてもワクワクしてくる。
石立鉄男さんが、大の将棋ファンだった。
また、東音楽大学の助教授であり野川雪の最大の理解者である大津光三役の辰巳琢郎さんは、囲碁が趣味だが、2010年に矢内理絵子女王(当時)と対談をしている。
YouTubeをご覧いただけば実感できるが、このドラマ、大映テレビ独特の演出で、出演者が皆、ものすごくオーバーな演技となっている。これぞ大映テレビの真骨頂。
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大映テレビ…この、私がリスペクトする大映テレビについては、Wikipediaの記事が正鵠を得ている。
1970年代から1980年代にかけて大映テレビが制作した実写ドラマは、当初から同業他社のプロダクションが制作する作品に比べ、「大げさな、感情の起伏の激しい芝居」「泥沼にはまるようなストーリー展開」「一見冷静に解説するような体裁をとりつつ、時に状況をややこしくするナレーション」「わざとらしい効果音の挿入」などの独特な演出から、他のドラマと区別する意味で「大映ドラマ」と呼ばれ、コアなファンを獲得していた。
私がコアなファンかどうかは別として、大映テレビが制作した主なテレビドラマは以下の通り。タイトルを見ただけでも大映テレビの「変な」雰囲気が伝わってくる。
少年ジェット海底人8823(ハヤブサ)
ザ・ガードマン
おくさまは18歳
なんたって18歳!
ママはライバル
アイちゃんが行く!
赤いシリーズ
夜明けの刑事
明日の刑事
噂の刑事トミーとマツ
高校聖夫婦
スチュワーデス物語
不良少女とよばれて
少女に何が起ったか
スクール☆ウォーズ
ヤヌスの鏡
花嫁衣裳は誰が着る
天使のアッパーカット
アリエスの乙女たち
プロゴルファー祈子
スワンの涙
家政婦は見た!シリーズ
赤いシリーズ以降、大映ドラマは本領を発揮し始める。
1.大げさな、感情の起伏の激しい芝居
これは、「スチュワーデス物語」での堀ちえみの、観ているほうが恥ずかしくなるような台詞回し、風間杜夫までが変な人に思えてしまうようなテンションの高い演技に代表されるが、それ以外にも本質的なことが沢山ある。
代表例としては
・バレエ教師役の宇津井健が、愛する妻(松尾嘉代)の大手術の最中、気を紛らわせるために、十数時間も病院の廊下でバレエを踊り続ける。
・殺人を犯して時効まで逃げ延びた元・前衛舞踏家役の前田吟が褌一丁で妖しげな前衛舞踏を踊る。台詞も毎回いつもの前田吟ではなく、別人のような何かにとり憑かれたような喋り方。
・松村雄基の「女はいたぶるモンじゃねえ、抱くモンだ…」「笙子に伝えてくれ、オレが夏の河原に別れを告げに行ったと…」「あの水平線の向こうにぶっ飛んで行きてぇのに気がつくといつも砂を噛むような毎日だぜ」などの大時代的な台詞
・神社の境内から白馬にまたがり登場する謎の美少女役、伊藤かずえ
監督は、戦前・戦後の大映映画を撮った大正や昭和初期に生まれた人ばかり。「台詞は一言一句、誤植までもそのまま覚えて喋れ」意味なんて聞こうものなら「役者辞めちまえ」だったということだ。
2.泥沼にはまるようなストーリー展開
複雑な出生の秘密、好きになった相手の婚約者が実は異母兄弟だったなど朝飯前。これに生みの母の記憶喪失や、産まれた時の産院での入れ替わりが絡まってきたりする。また、最終回の直前に、全ての秘密を知っているお祖母さんが交通事故で亡くなるようなことまでやってしまう。
3.一見冷静に解説するような体裁をとりつつ、時に状況をややこしくするナレーション
TBS系のナレーションは芥川隆行、フジテレビ系は来宮良子と、これ以上ない最高の布陣。ナレーション撮りの後、ストーリーがコロコロ変わったりしたと言われている。
4.わざとらしい効果音の挿入
効果音もさることながら、
・主人公が夜道を歩いていると、後ろから来た自動車が猛スピードで主人公を意図的にはねようとする。主人公は何度も難を逃れるが、最終回になっても、これを誰がやったかがわからない。
・医師役の石立鉄男が「姉さんの病気を治すには、あの方法しかない。…しかし、あれは絶対に使えない」と毎回言っているのに、最終回までその方法は使われず、どのような方法か明かされもしない。
・「ついに来た!母の殺人事件」というサブタイトルをつけておきながら、その回は何も起きない
「赤い激突」での例が多くなったかもしれないが、とにかく大映ドラマとはこういうものだ。
私は大映ドラマが大好きだ。
大映ドラマに欠かせない助演陣は、宇津井健、石立鉄男、国広富之、伊藤かずえ、松村雄基、鶴見辰吾、岡田奈々。
春日千春というプロデューサーが、この当時の大映ドラマの柱となっている。
そして、松村雄基さんが大の将棋ファン。いずれ、このブログでも松村雄基さんの記事を紹介したい。
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話は『あまちゃん』に戻って、今週は糸井重里さんと清水ミチコさんがゲスト出演する。
→ゲスト出演者発表!糸井重里・清水ミチコ(NHK)
歌謡番組『夜のベストヒットテン』の司会者を演じるという。
『ザ・ベストテン』と『夜のヒットスタジオ』の両方の顔を立てた番組名になっている。これも楽しみだ。
糸井重里さんは、1996年のNHK将棋講座で田中寅彦九段と対談をしている。