石田和雄八段(当時)らしさ溢れる「将棋相談室」

将棋世界1983年1月号、石田和雄八段(当時)の「将棋相談室」より。

問 短時間で強くなるには

 ぼくは現在中三です。将棋を勉強する時間があまりとれません。一日2時間たらずで強くなる、効率的な勉強法を教えてください。

(福島県 Oさん 14歳 3級ぐらい)

答 強い人と指す。

 ”将棋の時間がない”と言いながら。あなたは毎日2時間は将棋の勉強をされているわけです。これはもう、ないどころではなく、むしろ立派なものです。

 あなたの年齢ぐらいだと”寝ていても強くなる”時期ですから、どんな勉強法でも必ず強くなります。たとえばプロ棋士の棋譜を並べるもよし、強い人と指すのもよし、詰将棋を解くのもよし…という具合です。

 何をしてもいいですが、ただ一番大切なのは”もっともっと強くなりたい”という”意欲”があるか、どうかということです。強くなる方法は人それぞれ違って当然ですが、この意欲があれば強くなります。

 文面から推察してあなたにはこの意欲が特に強く感じられます。間違いなく、あなたは強くなります。

 具体的な方法をお教えしましょう。14歳という年齢とあなたの棋力を考えると、

 ”強い人とどんどん指す”

 これを実行してください。それも平手で3回戦って1勝2敗ぐらいの人が理想の相手です。きっとすぐ2勝1敗から3連勝と征服してゆけるはずです。そうなった時、またその上の強い人に挑戦する―これを順々にやっていけば、実力アップは確実です。

 それと「将棋世界」のような本を読むことも、とてもいい勉強法だと思いますよ。

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石田和雄九段の話す言葉がそのまま文章になったような回答。

石田九段の優しい人柄、将棋に対する真摯な思いが本当に伝わってくる。

私が中学3年の時にこのような言葉をかけられたら、第一志望の高校に落ちた後も将棋を止めずに続けていたと思う。

ものすごく説得力のある言葉だ。

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それにしても、質問をした中学3年のOさん、中学3年にもかかわらず将棋に毎日2時間もかけて、大丈夫だったのだろうか。

……と書いた瞬間に、私が中学3年の時も、テレビを見ながらだったが、名著「大野の振り飛車」や「升田式石田流」の棋譜並べをやったりして毎日2時間以上将棋をやっていたことを思い出した。

人のことは言えない。