NHK将棋講座11月号に掲載されている、私が書かせていただいた佐藤天彦八段-郷田真隆王将戦の観戦記で、行数の関係から盛り込むのを断念した部分を。
入れているとしたら、NHK将棋講座11月号73ページの”副調整室でディレクターが”の前に来る文章です。(ちなみに、以前このブログで書いた「三浦弘行九段が少し心配したこと」は、そのままの文章にはなりませんが、入れているとしたら72ページの最後になります)
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佐藤は対局前のインタビューで、郷田の印象を「居飛車の正統派、非常に本格的な将棋だという感じを受けています」と語った。
郷田は、佐藤の印象を「まだ対戦が少ないのでわからないことも多いですが、若い世代の中では受身、渋い将棋という印象を持っています」と語っている。
解説の三浦弘行九段も、「私もそう思います。佐藤さんは苦しい局面でも耐え忍んで逆転するタイプ。苦しい時に勝負手を放って暴発するようなことがありません」と同意する。さらに、「郷田さんも佐藤さんと似た棋風だと思います。郷田さんは攻めが鋭いですが、受け将棋かなと思っています」とも。
郷田といえば攻め将棋のイメージ。しかし郷田とは20年以上戦ってきている三浦が言うのだから説得力がある。
対局後、郷田に聞いてみた。
「三浦さんがそう言っていましたか。三浦さんとの対局の時は彼から攻めてくることが多いからそのような印象なのかもしれませんね」
なるほど、そういうことか。
数日後、佐藤に聞いてみた。
「受身で渋い将棋ですか?僕は自分の将棋はバランス型だと思っているのですが……」
棋風は対戦する棋士によって感じ方がさまざまに変わってくるものなのかもしれない。
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佐藤天彦八段の棋風から。
羽生善治王座は、王座戦五番勝負の直前に佐藤天彦八段の棋風について次のように語っている。
佐藤さんとの対局はこれまで3局と少ないので、まだ棋風がとらえきれていないところもあります。受けが強い将棋といわれることもあるようですが、先手で角換わり、後手で横歩取りはどちらも自分から攻めないといけない作戦ですし、動くことを中心に考えているのではないかと思います。
→第63期将棋王座戦五番勝負 9月2日開幕(日本経済新聞)より
たまたま同じ頃だと思うのだが、佐藤天彦八段は、将棋世界10月号でのインタビューでも自身の棋風をバランス型と答えている。
→【ノーカット版】第63期王座戦挑戦者 佐藤天彦八段インタビュー「自信と期待の五番勝負」(マイナビ将棋情報局)
これまで、受けが強いという面が出る勝負が多かった、ということなのだろう。
佐藤天彦八段はインタビューでも語っているように、あまり棋風を固定化して考えずに、局面に従っていいと思った手を指す、という姿勢(=バランス型)だ。
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観戦記では”終局後、郷田と話す機会があった”と書いているが、詳しく書けば、郷田王将はこの日の夜に別の用事(将棋界に関係する会社のパーティー)があり、それまでの時間、NHKの近所の初めて入るレストラン風酒場で1時間ほど飲んで話をする機会があった、ということになる。
「男二人で来るのはもったいないような雰囲気の店ですね」と郷田王将が言うほどの、カップルや女性客がほとんどを占める店だった。
そこで冒頭の、「三浦さんがそう言っていましたか。三浦さんとの対局の時は彼から攻めてくることが多いからそのような印象なのかもしれませんね」の話に続く。(NHK杯戦では対局者は、解説者がどのような解説をしていたか、対局相手がインタビューでどのような話をしていたか、放送日まで知ることができない)
私が、そういえば、昔の将棋世界で銀遊子(片山良三さん)が「郷田2級は受けに味がある」と書いていましたね、と言うと、郷田王将は、「いやいや、僕の奨励会初段頃までの将棋は好き放題指していただけで滅茶苦茶でしたから」と笑いながらビールを飲んだ。
やはり、郷田王将は自身が攻め将棋であるこということを貫いているように感じた。
やっぱり郷田王将は格好いいな、と少し酔い始めた頭で思った。
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