将棋世界2000年10月号、神吉宏充六段(当時)の「今月の眼 関西」より。
現在NHK将棋講座の講師として活躍中の井上慶太八段。アシスタントでタレントの、せがわきりさんとのコンビネーションも良く、井上ワールドは絶好調。中でも番組の冒頭で見せる「井上慶太の将棋を指そう!」と叫びながらピシッとポーズを決める絵柄は、当初恥ずかしそうだったが、今では慣れたもので笑顔にも余裕が見られる。「あれはせがわさんの提案でして…へえ、よろしいでっか」と嬉しそう。さらなるパフォーマンスに発展するだろうか?期待しとるで慶太!
さてその井上先生と先日東京から一緒に新幹線で帰阪することになった。彼は講座の、私は将棋パトロールの収録を終えての帰宅の途である。お互い疲れていたので、缶酎ハイを10杯も飲むと酔いが回ってきた。二人の笑い声はデカく、きっと周囲は迷惑千万だったろうが、そんなことはどこ吹く風の二人である。ワハハのハハハでどないやねんの酔っぱらい人生…。
「ワシ、ちょっと電話してきまっさ」と慶太。電話のあるデッキに行ってすぐに私の携帯のバイブが振動した。「お、誰からやろ?もしもし」
「ああ、井上です。明日の約束行けますんで」
「???何のことや」
「へ?そちらどなたはんでっか」
「ワシや、カンキや。どこかけてんねん」
どうやら酔っぱらって、私の携帯に間違えてかけてしまったようだ。でその1分後、また振動が…「はい」
「あ、もしもし井上です。明日の…」
「そやからワシやって」
「ああ、何でカンキさんが出るねん!」
こっちが聞きたいわ。ホンマ。
そんな漫才道中も新大阪で幕。と思いきや、しっかりオチがあった。あと1時間電車で揺られて加古川まで帰る井上先生、車中ですっかり寝てしまった。しかし流石は勝負師、駅に着くとパチッと目を開けホームに降りた。ところがそのプラットホームを布団と勘違いして寝てしまったのである!嗚呼天下の八段がホームで寝てしまうとは…情けないぞ慶太!車掌に起こされへんかったら危なかったぞ慶太!ということで今回は井上特集でした。
(以下略)
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「缶酎ハイを10杯も飲むと」と書かれているが、二人で10杯なのか一人あたり10杯なのかで大きく状況は変わってくるが、神吉宏充六段(当時)が飲ませ上手なことなどから考えて、一人あたり10杯の量だったのだと思う。
東京-新大阪間が新幹線で2時間半として、15分に1本のペースで缶酎ハイを開け続けていたのだから、かなりなものだ。
缶酎ハイの容量が350ml、アルコール度数が5%として、10本でアルコール度数が50%の酒を350ml飲んだのと同じアルコール量となる。
ウイスキーのボトル半分強といったところ。
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井上慶太八段(当時)にとっては災難だったが、何事もなくてなにより。
加古川駅のベンチで横になったのなら神吉六段も記事にはしなかったろうが、ホームに寝てしまったのだから記事になってしまう。
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車内での二人の会話を聞いていた周りの乗客の方々は、結構楽しめたのではないかと思う。