棋士が対局後に飲みに行く時に避けること

将棋世界2001年12月号、日浦市郎七段(当時)の「自戦記・日浦市郎風」より。

文章的には昨日の続き。

〔その4 東海林さだお風〕

 対局が終わった後のビールはうまい。この意見には棋士全員の賛同を得られるだろう(飲めないヒトをぬきにして)。

 中には一人くらい「イヤ、オレは冷たいビールよりあっためた牛乳の方がいいね」というヒトが一人くらいいるかもしれないが、そういうヒトとは友達になりたくない。

 特に今回のような持ち時間3時間の対局の終わった後のビールはうまい。終局が6時頃、感想戦が終わるとだいたい7時。適度に腹がすいて適度に疲労した体に冷たいビールが心地よいのだ。

 これが持ち時間4時間(夕休なし)だと腹がすいてビールよりもまずメシを食いたくなる。5時間(夕休あり)だと腹がいっぱいだし、飲みに行っても終電の時間を気にしなければならない。6時間になるともう終電もなく、疲れはててさっさとタクシーで帰ろう、ということになってしまう。

 というわけでうまいビールを飲むには持ち時間3時間がベストなのだ。将棋連盟には「うまいビールを飲むために全ての棋戦の持ち時間を3時間にする会」というのがあるくらいだ(ありません)。

 対局後に飲む場合、つまみは枝豆や冷奴といったあっさり系よりも鳥の唐揚や串かつといったまったり系の方がいい。対局でエネルギーを使うからだろうか。

 避けたいのは今戦ったばかりの相手と一緒に飲むことだ。普段から親しくしているのならいいが、そうでない場合、ビール飲みながら感想戦の続きをやるハメになりかねない。負けたときはその将棋を忘れたいと思っているのにそれが出来なくて不愉快な思いをすることになるし、勝った場合も(この世界では勝った方がおごるというキマリらしきものがある)相手に気を使いつつ財布の中身を心配しなければならぬ。

 もしその日、仲のいいヤツが別の対局をしていてそいつも対局が終わっていれば、そいつとバカ話をしながら飲むというのがいい。

 しかし、やはりうまいビールを飲む一番の条件は対局に勝つことだ。

 勝った後、まっすぐ家に帰り、今戦ったばかりの棋譜のコピーを見ながら、ニンマリしつつ一人で飲むビールというのもまた格別である。

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たしかに、対局者同士が対局終了後一緒に飲みに行くのは、いろいろな面で味が良くない場合が多いのだろう。

年齢が例えば20歳以上離れていて、年上の棋士が勝った場合(年上の棋士が誘った場合)は、そのような雰囲気は薄れるかもしれない。

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家で飲む酒は、外で飲むのとはまた違った趣きがある。

ところで私の話になるが、若い頃は家では酒を全く飲まなかったのに(外ではたくさん飲んでいた)、40代になってから家にいても飲むようになった。

このブログも2013年の初夏の頃までは、飲みながら書いた記事がそこそこあった。

しかし、2013年の8月に鼻の手術をしてからは、家で飲む酒が美味しく感じなくなり、ここ2~3年は全く家で酒を飲まなくなっている。(外では普通に飲んでいる)

若い頃に戻っただけだと思えば不思議でもないのだが、とにかく鼻の手術が(良い方に)影響しているのは間違いなさそうだ。