闘志を燃え上がらせる原因となった、対局開始早々に目を通した週刊将棋の記事

将棋マガジン1984年9月号、吐苦迷棋坊さんの「第43期名人戦挑戦者決定リーグ戦」より。

 大所帯のこのクラス(現在のC級2組)、対局日には、どこかの将棋大会のように、各部屋で横一列に盤が並ぶのである。けれど、決してなごやかな雰囲気などにはなりはしない。

 ある意味では、地獄とも言えるこのクラス。みんな抜けだそうと必死なのだ。

(中略)

 8図は、室岡が△3八歩と意味のないパス手を指したところ。

 こういう手がリーグ戦用の手で、動くと負けがはっきりするから、じっとしているのである。ここまでうまく指しまわしてきた井上だが、この手を境に乱れる。誰だってこんな手をみれば優勢から勝勢にしてやろう、と思う。そして、決めにいこうとする。

 井上は攻めた。しかしこれが室岡の罠というか持ち味で、9図となっては難しくなっている。

 うまいものだ。

 ここでおもしろいことを書いちゃおっと。

 対局開始早々、室岡は週刊将棋に目をとおしていた。そこには、「井上は初戦をものにすれば、突っ走るであろう」と書かれてあった。それをみつけた室岡は、なんと、当人を盤の前にして「初戦をねえ」と言う。よくやるよこの男。あんたは偉い。

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「井上は初戦をものにすれば、突っ走るであろう」のような記事を見れば、初戦の相手である室岡克彦四段(当時)は当事者、勝負師として闘志がメラメラと燃えてくるのは当然のことだろう。

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別の解説で、8図は先手に歩を渡せない局面とされている。

△3八歩のところで△4七歩成から馬を作るのも有力に思えるのだが、それでは駄目ということなのだろう。

▲3八同飛としてくれれば後々△3七歩を叩けるから△4七歩成とできるということなのかもしれない。

どちらにしても△3八歩は、次にどうこうあるわけではなく、そのままにしておいても良い状況。

井上慶太四段(当時)は8図から▲3七桂と指す。

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昔は、対局中であっても午前中は将棋世界や週刊将棋を読みながら、ができた時代。

戦術の変化で序盤早々から盤上で緊張しなければならなくなるのは、羽生世代出現以降ということになる。

 

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