佐藤康光二冠(当時)「将棋で私が新手を指し、有力と認識されれば意義があるが、本当はまずく、その後被害?に遭われた方の例もある」

将棋世界2003年1月号、佐藤康光棋聖・王将の自戦記「接戦の一局」より。

 前号で詳報があったが第2回国際将棋フォーラムは大成功のまま終了した。

 日本独特の文化で最高の知能ゲームと思う将棋の世界交流は楽しい。国内とはまた違った良さがある。

 次回の開催が待ち遠しい。

 そして次の日。フランスの王者ロティエ(J.Lautier)さんによるチェスの3面指しがあった。羽生竜王、森内名人と私が参加。世界にネット配信という私にとっては無謀?とも思えるものだったが、結果はご存知の方も多いと思うが森内名人が黒番でドローという快挙を成し遂げ、これも話題を集めて終わった。

 3局中、私のが一番早く終わり、またあまり見所もなかったと思っていた。感想戦がなかったので親しい知人やチェス強豪、ライター等に感想を聞くと中盤の私の一手の評判が悪い。50年代に指された古い手でセンスの悪い手、現代ではまずない手との結論であった。

 が、先日の第35回チェスオリンピックを見て驚いた。次代の世界王者との評判のポノマリョフ(R.Ponomariov)と、こちらも天才少年と評判のラジャボフ(T.Radjabov)のチェスで何とその手が現れた!

 まさか私が世界に流行を発信?研究されてた?

 ひょっとして才能があるのだろうか。

 将棋で私が新手を指し、有力と認識されれば意義があるが、本当はまずく、その後被害?に遭われた方の例もある。本当の所を知りたい。とにかく今後が楽しみだ。

(以下略)

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フランスのチェス王者・ロティエさんによる、羽生善治竜王、森内俊之名人、佐藤康光二冠へのチェス3面指し。

2002年10月20日(日)にNEC芝倶楽部で行われている。

当日の模様は、過去の記事で紹介している。

結婚1年前の森内俊之八段(当時)

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フランスのチェス王者と日本の将棋のタイトル保持者とのチェスなので、インターネットを通して世界中のチェスの強豪が観戦していたと思われる。

佐藤康光二冠が放った50年代の手がポノマリョフ-ラジャボフ戦で現れたのも、偶然ではなく、ロティエ-佐藤戦を参考にした可能性が高いとも考えられる。

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「将棋で私が新手を指し、有力と認識されれば意義があるが、本当はまずく、その後被害?に遭われた方の例もある」

7月4日に行われた竜王戦決勝トーナメント 佐藤康光九段-村山慈明七段戦(村山七段の勝ち)の夕食で、佐藤康光九段は「冷やし中華と餅」を注文している。

全く前例のない組み合わせの新手で、ネットなどでは大いに話題となったが、本当に美味しかったのかどうかは謎のままである。

試した方のブログなどを見ると、別々に食べる方が良いだろう、というようなことが書かれている。

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佐藤康光九段は、対局で勝った時に注文したメニューを連続して採用する傾向があり、逆に、敗れた時のメニューはそのようなことはなく、そういう意味でも「冷やし中華と餅」は二度と注文されない可能性がある。

私も怖いもの見たさで試してみたいという気持ちだけはあるのだが、餅があまり好きではないので、きっと試すことはないのではと感じている。