板谷進八段(当時)「プロはな~あ…やり手ババアみたいな手を指すから、勝つの大変だろ」

将棋世界2004年6月号、写真家の弦巻勝さんの「あの日、あの時、あの棋士と」より。

  最近、わが家に送られてきた本を見て考えてしまいました。「米長邦雄の本」将棋連盟編、「将棋、ヨーロッパを行く」田邊忠幸著、いずれも僕が表紙の写真を撮影しています。

 米長さんの此の顔写真もずいぶん前に撮影した記憶、ヨーロッパを行くの方は田邊さん、将棋世界の編集長大崎さん、そして、まだ20歳になったばかりの高橋和ちゃんと僕、将棋の旅の話なんです。

 和ちゃんの写真は田邊さんに電話して聞いたら8年前と言う。でいろいろ話をしているうちに、ふと思ったのが芹沢先生と板谷先生の事。

「田邊さん…芹沢さんとさ、板谷さんは、いくつで亡くなったんだっけ…」

 芹沢さんが51歳で板谷さんにいたっては47歳と言う。あれ、今の僕よりだいぶ若かったんだな~あ、僕はなんだか変な気分になってきて、「忠幸さん…早く和ちゃんの本の出版記念で集まろうよ…大崎、和、ヒジトン、は大丈夫だが俺とあんさん危ないで~え」会える時にさ、会っておこうよ。

 僕はプロ棋士の先生に将棋を教えていただく時は二枚落ちと決めている。板谷先生には100局やそこらでは、きかないほど指してもらった。

「弦巻君…プロはな~あ…やり手ババアみたいな手を指すから、勝つの大変だろ」

「なんだぁ、そんな手しか浮かばんのか…知恵が無いと言うのは気の毒な事だねぇ~…人間、外から見たんじゃあ、頭の中まで解らんからな~あ」

「なんだそれ、紅葉のような可愛い手指すねぇ」

「センセ、もう将棋ヤダ、風呂行こうよ」

 芹沢先生とは口喧嘩もしたけれど、ずいぶん酒席に誘われたです。酒席で、

「君…タコの足は何本だか知っているかい…」

「8本くらいですかねえ…」

「あれは君…足だか手だか解らんだろう…」

「…」

「そういう時はな~あ、タコの頭を、思いっきりひっぱたくんだ」

「で、痛て~えって上げたほうが手なんだ、足上げる奴は居ね~えだろ」

 あのころ大先輩と思っていた先生方より歳が多くなっている自分を感じました。

 本日NHKで小学生名人戦の撮影なんです。そういえば、この小学生名人戦に羽生さんと森内さんが決勝に出てきて撮影したのが、ついこの前だったんじゃあないかな~あ…写真って歳取らないからホント不思議。

板谷進八段(当時)。同じページに掲載されている弦巻さん撮影の写真のうちの一枚の一部。

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アマチュアへの懇切丁寧かつ親切な指導で定評のあった板谷進八段(当時)の、弦巻勝さんへのサディスティックな指導。

このギャップが楽しい。

写真の板谷進八段の優しい笑顔。

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「紅葉のような可愛い手指すねぇ」は、私の記憶が確かなら、升田幸三実力制第四代名人の「紅葉のような手で可愛い手を指しよる」が原典になっていると思う。

どちらにしても、子供のような手、ということを意味している。

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タコの腕は6本、脚が2本であると、2008年に欧州の研究チームが発表しているようだ。

タコの「足」のうち6本は腕、2本が脚=研究(ロイター)

芹沢博文九段の、「タコには手もある」という発想は、計測方法は別としても、当時としては非常に先進的だったことになる。