杉本昌隆五段(当時)「今見るとひどい筋の悪さですが、この頃は自信を持ってこれを指していました」

将棋世界1998年7月号付録「全棋士出題次の一手 PART2 子供の頃の得意戦法」より、杉本昌隆五段(当時)。

●ヒント●

今なら▲7五歩ぐらいでしょうが、当時は重い手が好きでした。

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●解答● 

▲8七金(解答図)

 これは私が小学4年生ぐらいの頃の実戦です。棋力は上級者といったところでしょうか。

 狙いの▲8七金以下、相手が放置すれば▲9六金~▲8五金。△7四歩なら▲8六歩から飛車先を逆襲するのが得意戦法でした。

 少年時代は居飛車党で、矢倉棒銀が好きでしたが、もう一つの得意がこの棒金戦法。今見るとひどい筋の悪さですが、この頃は自信を持ってこれを指していました。

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たしかに1図から▲7五歩なら、△同角▲7六銀△4二角▲8五銀と快調に捌ける。これぞ振り飛車らしい手順。

▲8七金は重くて指しづらいが、▲9六歩を突いていない状態であるなら、非常に手厚くじわじわと敵飛を圧迫できる手だと言える。

▲7五歩が日本刀の切れ味としたら、▲8七金は牛刀あるいは大鉈のような斬り方。

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▲8七金と同じような感覚で、升田式石田流泣かせの手がある

A図は、▲8六歩△同歩▲同飛と飛車交換を迫る狙いだが、後手が△9四歩と突いていない状態では非常に危険な手となってしまう。

A図以下、△8三金▲8五歩△9四金(B図)となってしまうと、先手が相当に困ることになる。

重そうに見える手は、怖い手であることも多い。