NHK将棋講座2018年8月号「井上慶太九段-糸谷哲郎八段戦」観戦記

一昨日は、NHK将棋講座2018年8月号の発売日。(今日が発売日と勘違いしていました)

◯表紙は羽生善治竜王のイラスト。

○佐藤紳哉七段の講座「佐藤紳哉のエンジョイ将棋」、8月のテーマは「得意戦法を持とう」。第1週は破壊力抜群の棒銀、第2週は守備力が高い矢倉、第3週はバランスのいい四間飛車、第4週は強気に攻める石田流三間飛車。初心者にもわかりやすいように、見事に決まる成功例を中心に解説されています。

◯後藤元気さんの「渋谷系日誌」は、NHK杯戦での「弟子の対局と師匠の解説」と「師匠の対局と弟子の解説」について。この号に自戦記、観戦記が掲載されている4局のうちの3局、井手隼平四段-近藤誠也五段戦の解説が井手四段の師匠の田丸昇九段、永瀬拓矢七段-高野智史四段の解説が高野四段の師匠の木村一基九段、井上慶太九段-糸谷哲郎八段の解説が井上九段の弟子の船江恒平六段ということから、それぞれの微笑ましいエピソードが紹介されています。また、藤井聡太七段の昇段スピードに扇子の段位が追いついていなかった頃の、羽生善治竜王が名人戦第2局の打ち上げの席での雑談で出した妙案についても書かれています。

○段・級位認定 次の一手問題

○将棋連盟からのお知らせ

○女流棋士会からのお知らせ

○日本女子プロ将棋協会からのお知らせ

○「重箱のスミ」クイズ

○テキスト感想戦

○付録は、「船江恒平のホップ ステップ ジャンプ 4手詰め!」。後手玉が王手をされた状態から始まる船江恒平六段の新機軸の詰将棋。解いてみようという気持ちが強く起きます。

〔NHK杯戦観戦記〕

◯1回戦第9局 井手隼平四段-近藤誠也五段

「生涯の課題」 自戦記:井手隼平

◯1回戦第10局 永瀬拓矢七段-高野智史四段

「緊張の中の再戦」 自戦記:高野智史四段

◯1回戦第11局 井上慶太九段-糸谷哲郎八段

「面白い作戦やね」 観戦記:私

◯1回戦第12局 佐藤慎一五段-森内俊之九段

「盤石の勝利」 観戦記:岩田大介さん


今月号には私が書いた観戦記(井上慶太九段-糸谷哲郎八段戦)が掲載されています。

井上九段の模様が良かった将棋でしたが、勝ちを逃す手があって、糸谷八段が逆転をした一局。

感想戦の模様、後日の両対局者の談話、5月に行われた森信雄七段一門祝賀会で兄弟子の山崎隆之八段が糸谷八段について語ったこと、井上九段の祝辞、などを盛り込んでいます。


対局前の控え室では、富岡製糸場で行われる叡王戦決勝七番勝負第4局の大盤解説を担当することになっている糸谷八段が、終局時刻が遅くなった場合、どうやって翌日午前中から開催される大阪でのイベントに間に合うように上州富岡→高崎→東京→新大阪を移動すればよいのか、解説の船江恒平六段に相談していました。

対局前の振り駒では、振り歩先の譲り合い(上座の譲り合いと同等)がありました。井上九段が譲ろうとして、糸谷八段が恐縮しながら懸命に「先生、それはいけません」とおしとどめて、元通りの井上九段の振り歩先となりました。

感想戦では、井上九段の「賢いな、あんた」「二歩打ったらあかんぞーと思っとって…またテレビ出たらいかんぞー」などの井上九段らしい面白い会話がありました。

井上九段と糸谷八段といえば、糸谷3級時代の駒台置き間違え反則負けのエピソード(→糸谷哲郎3級(当時)の伝説、稲葉陽5級(当時)の伝説)があります。井上九段に確認したところ、落ち込んでいる糸谷3級に「プロになったら、これが伝説になるんやから、よかったやないか」と言ったことは覚えているということでした。

これらのことは、当初は観戦記の中で触れようと思っていたのですが、全体の流れや行数の関係などから、残念ながら盛り込むことはできませんでした。

逆に言えば、このようなエピソードを入れることができなかったほど、トピックスが豊富だった一局だったということになります。

NHK将棋講座2018年8月号、ぜひご覧ください。

 

NHK 将棋講座 2018年 8月号 [雑誌] (NHKテキスト)