近代将棋1982年4月号、原田泰夫八段(当時)の「棋談あれこれ」より。
昇降級リーグ終る。昇級、昇段者に拍手。
降級、降級点者は残念、奮起を期待する。
原田降級、退役と決定。2組…六段の組で不振、まさか3組…五段の組でプロ棋戦に登場するわけにはいけない。棋戦の少ない時にエレベータ八段で、とにかくA級在位10年は事実である。11年前かB1組で優勝、A級に復活「原田八段、48歳の抵抗」とほめられたことがあった。
もう一度がんばれ。ハリがなくなる。さびしい。生活は大丈夫なの……など激励とご心配下さる人たち。やめた方がいい。先生の場合はもっと早くやめるべきだ。将棋界に尽くし方がいくらもある……これまた好意的な言。
「将棋天国」誌に「退役は爽やかに」と発表した。引退という言葉は嫌い、棋士に退職はなし。自分でけじめをつけただけ、少年の気持で人生の出直し、講演、執筆、指導、読書、”研修会”の勉強にも力が入る楽しい陽春である。
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昇降級リーグ2組は順位戦B級2組、3組はC級1組のこと。
昔は、C級2組が四段格、C級1組が五段格、B級2組が六段格、B級1組が七段格、A級が八段格とされていた。
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棋士は退会したり除名にならない限りは一生棋士であり、引退したからといっても名実ともに「棋士」のまま。
そういう意味では、たしかに「引退棋士」という呼び名よりも「退役棋士」の方が意味としては正しいのだろう。
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「講演、執筆、指導、読書、”研修会”」の研修会とは、原田泰夫九段の自宅のある阿佐ヶ谷の居酒屋でいろいろな人と語り合いながら飲むこと。