話さなくても良いことを次々と話してしまった奨励会員

近代将棋1983年1月号、「関東奨励会」より。

 奨励会の合同旅行は盛会であったようだ。関東の連中の感想を聞くと関西はなかなかやるというのが多かった。もちろん将棋のことである。

 将棋のあとはやはり恒例の行事が行われたようであった。

 何年か前の奨励会旅行の楽屋話。

 旅行では一応無礼講となる。タバコを吸っている奨励会員を幹事の先生が見つけ、

「ほほう、君はタバコを吸うのかね?」

奨励会A君「い、いえ、お酒を飲んだときだけです」。

幹事「え!お酒も飲むのかね」

A君「そ、それは、勝負事に負けて熱いですから」

幹事「なんと!そんなこともするのかね」

A君「いやー、彼女にふられればくやしいですから」

幹事「な、なにー」

 と全部ばれてしまった。半分作り話のようだが、半分は本当のことである。

 奨励会の入会試験も終わり、合格者も決まったようである。新入会員の対局は12月2日からとなる。将棋の技術もさることながら、精神的にも向上を目指して修行を積んでもらいたい。

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昭和の古き良き時代の話。

会話の流れからすると、A君は未成年と思って間違いない。

高校生の年齢だったら幹事がそこまで驚かないだろうから、中学生の年齢だった可能性もある。

先崎学九段が酒やタバコを覚えたのが中学生の時だが、この時はまだ小学生。

先崎学少年とは別人の強者がいたということなのだろう。

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「新入会員の対局は12月2日からとなる」

後にプロとなる新入会員の1982年12月2日の第1局目の勝敗は次の通り。

飯塚祐紀6級 ●
豊川孝弘6級 ●
郷田真隆6級 ●
森内俊之6級 ●
小倉久史6級 ●
羽生善治6級 ●
佐藤康光6級 休

意外にも、奨励会での初日第1局目は全員が勝っていない。

結構すごい確率だと思う。