近代将棋1984年3月号、片山良三さんの「駒と青春 講習会スナップ」より。
これからの棋士は、世間から「将棋だけは強い」と言われるような存在であってはいけないはずです。将棋の技を高めていくのは当然ですが、同時に人間性、社会性をも身につけていくことも必要でしょう。
そういう意味で、将棋連盟が新しく、奨励会員のための「講習会」をスタートさせたことは近来のヒットでした。他のいろいろな世界に住む人たちの講演を聞くことは、つい視野が狭くなりがちな奨励会員に、大きなプラスにならないはずはありません。
1月の講師は、毎日新聞で将棋と芸能を担当しておられる加古明光記者でした。
約1時間の講演は、芸能界と将棋界の似ているところ違うところ、売れる者(強くなる者)はデビューの時からどこか光って見える、というやや硬い話から、郷ひろみと松田聖子のロマンス説は80%以上信じてよい、中森明菜の月給は300万円だ、というようなヤジ馬的な興味をひく話まで実に盛り沢山で、期待にたがわぬ内容にみんな満足げでした。この「講習会」は、奨励会員たちのウケもすこぶる良いようです。
講演が終わり、午後からはやはり将棋です。A級からF級までの6グループに分けられてのリーグ戦が行われるのです。昇級には無関係な、いわば非公式戦ですが、けっこういい額の賞金が連盟から出るのでこれも人気の理由のひとつとなっています。
(以下略)
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このような講習会は、この1年前(羽生善治竜王など羽生世代棋士が奨励会に入会した直後)に第1回が行われた。その時の講師は二上達也九段。
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加古明光記者は日本レコード大賞の選考委員でもあった。
講習会の狙いは、視野を広げてもらおうということだったのだと思う。
そういう意味では、面白いということが大事なので、芸能界系は非常に的確なテーマだったと言えるだろう。
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