藤井猛四段(当時)の頭突きのような攻撃

将棋マガジン1991年9月号、「公式棋戦の動き 新人王戦」より。

 小林(健)八段の四間飛車は有名だが、最近の若手では藤井猛四段の振り飛車も注目を浴びている。

 勝率も高く、心憎い指し回しは見てとてもためになる。

 対堀口五段戦でも渋い一着を指して勝っている。

 8図がその将棋で、3一の角を△2二角と上がった局面。

 ここからの指し手を十分に味わってほしいと思う。

8図以下の指し手
▲3六歩△2四桂▲2六歩△3六桂▲同金△同歩▲3五桂△1三玉▲1五歩(9図)

 ▲3六歩が”敵の打ちたいところに打て”の一着。これを△同歩では味気がないので△2四桂と控えて打って含みを持たせたが、▲2六歩が巧技だった。自玉頭で怖い意味もあるが、こうして相手の攻めを催促することで、寄せの道を開いた。

 最終手以降藤井は、後手玉を下段まで追い落としてきれいに寄せ切っている。

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藤井猛四段(当時)が四段になってから半年も経っていない頃の一局。

私のような昭和の振り飛車党なら8図で▲3七歩とでも打って一安心しておきたいところ。

ところが藤井猛四段は、ここを好機と見て、玉頭から攻めかかる。

形にこだわらない、このような発想をする藤井猛四段だったからこそ、この数年後に藤井システムを誕生させることができたのだと思う。