近代将棋1988年6月号、炬口勝弘さんの「若き獅子たちの現在・過去・未来」より。
将棋大賞も今年は15回目。年々歳々、受賞者の年齢が若くなる傾向にあるが、今年はなんと平均年齢21.7歳。史上最年少記録となった(最多対局賞などの記録部門も加えた。ただし特別賞=今年は該当者なし。東京将棋記者会賞=高柳敏夫八段を除く)。ちなみに昨年は21.75歳だった。
10代棋士の台頭と20代棋士のタイトル席捲という新旧交代の潮流が如実に表れている。
10年前はどうだったか?第5回(1977年度)は、最優秀棋士賞に中原誠名人(30)、新人賞に淡路仁茂六段(28)が選ばれているが、他に花村(60)、加藤一(38)、大内(36),米長(34)らがいて、平均年齢は34歳であった。
それから5年後、それは谷川浩司が、史上最年長42歳で名人となった加藤一を破り、21歳で史上最年少名人になり、また林葉直子が、女王蛸島を破って、15歳で女流名人に就いた年だが、受賞者(第10回、1982年度)の平均年齢はグンと若くなって28歳だった。それが今年は22歳。なんと5年ごとに6歳ずつ若くなってきた勘定になる。
まさに若手が団体で大暴れしている感じである。指し盛りの30代、ベテランの40代の影は、すっかり薄くなってしまった。
十年一昔というが、今回の受賞者の面々、10年前には谷川を除き、皆、プロになってもいなかった。羽生善治にいたっては7歳。まだ駒にさえ触れていなかった。
という訳で、受賞者について、写真と文で紹介せよという編集部の注文には、彼らの5年前の姿を写真で振り返り、ミニインタビューで、それぞれの5年後の姿を語ってもらうことにした。題して「将棋大賞。若き獅子たちの現在・過去・未来」。
(中略)
1983年4月、名人戦第1局、赤坂プリンスホテルへ向かう、東京駅で。
1988年4月13日名人戦第1局、伊香保温泉へ向かう谷川王位。5年前(上)と殆ど変わりませんね。
コメント・5年後の私
「えー、困ったですね(と大長考)。どうなってますか、ビジョンが浮かんでこない。結婚はしていたい」
(中略)
1983年10月奨励会1級の頃。
将棋大賞表彰式(1988年4月18日将棋連盟)
コメント・5年後の私
「大学には、たぶん行ってないでしょう。5年後の目標はA級八段です。タイトルは、取れればいいけど、そううまくいかないかもしれません」
(以下略)
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将棋大賞の受賞者平均年齢とは、なかなか着眼点が鋭い。
たしかに、これなら世代交代しているかどうかの傾向がつかめるというものだ。
ちなみに第46回(2019年)将棋大賞受賞者の4月1日時点での平均年齢は28.36歳(1988年と同じ部門のみでの計算)。
1988年当時、いかに若手棋士全体の勢いが凄かったかが分かる。
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谷川浩司王位(当時)の「えー、困ったですね(と大長考)。どうなってますか、ビジョンが浮かんでこない。結婚はしていたい」
この時は名人戦で挑戦中。
谷川浩司九段は1992年10月3日に結婚式をあげているので、十二分に5年後の姿を当てている。
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羽生善治五段(当時)の「大学には、たぶん行ってないでしょう。5年後の目標はA級八段です。タイトルは、取れればいいけど、そううまくいかないかもしれません」
羽生善治九段がA級八段になったのは1993年4月1日。まさしく計画通りちょうど5年後にA級に昇級している。
タイトルを初めて獲得したのは1989年12月のことで、5年後にあたる1993年には三冠王~五冠王になっており、「タイトルは、取れればいいけど、そううまくいかないかもしれません」というわけでは決してなかったということになる。
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このような企画は、毎年やっても面白いと思う。