佐藤康光五段(当時)「まあまあ」

近代将棋1990年12月号、木屋太二さんの第13回若獅子戦準決勝〔佐藤康光五段-阿部隆五段〕観戦記「兄弟弟子の闘い」より。

 対局室。オヤッと思ったのは阿部が上座に座り駒箱をあけたこと。クラスは佐藤がC1、阿部がC2。佐藤が先輩を立てた。これはよくあること。

 そのうち、二人が「まあまあ」「まあまあ」といいだした。何のことかと思ったら王将をどちらが持つか、そのゆずり合い。

 まず阿部が玉将を取った。それを見て佐藤が「これはぼくが」。そこから「まあまあ」のやり取りへと続き、「そう、それじゃあ」ということで阿部が王将を持つことになった。

 種を明かせば、阿部と佐藤はともに田中魁秀八段門下の兄弟弟子。弟弟子の佐藤としてはクラスが上でも駒落ちから教わった兄弟子に王は取れないというわけ。

(以下略)

近代将棋同じ号より。

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上座と下座、王将と玉将、駒箱を開ける、など、将棋界の譲り合いは3要素くらいある。

このケースは兄弟弟子ということなので、短い時間で方向性が固まったようだ。

弟弟子の佐藤康光五段(当時)の希望が全面的に通った形。

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下の写真は、1990年3月のA級順位戦、中原誠棋聖-内藤國雄九段戦の対局前の光景。

先に下座で待っていた中原棋聖を上座に押しやる内藤九段。

この後、内藤九段が下座に座ることに成功したようだ。

将棋マガジン1990年5月号より。撮影は弦巻勝さん。

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エレベータに乗る時にも譲り合いが発生したケースがある。

佐藤康光王将「羽生さんお先にどうぞ」

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かなりダイナミックな譲り合いもあった。

究極の上座の譲り合い