村山聖五段(当時)の振り飛車講座(4)

将棋マガジン1991年11月号、村山聖五段(当時)の連載講座「ダイナミック振り飛車戦法」より。

将棋マガジン同じ号より。

 昔、私は努力をしていれば必ず夢は叶うと思っていました。

 しかし月日は流れ、この世には、どんなに思いを寄せても実らない事があると分かりました。

 しかし努力をしない限り永遠に辿り着く事はないのです。

 彼はいつも言ってました。

”大いなる思いは99%の努力と1%の運によって叶うと”

 今回は位取りを中心に講座を進めます。

初手からの指し手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲2五歩△3三角▲4八銀△3二銀▲5六歩△4二飛▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲5八金右△8二玉▲9六歩△9四歩▲6八銀△5二金左▲5七銀右(基本図)

 位取りの戦型では、振り飛車の玉の囲いは美濃囲いか穴熊、居飛車は舟囲いです。

 ▲5七銀右と上った手で先手の作戦が位取りである事が大体決まりました。

基本図以下の指し手①

△4三銀▲7七銀△4五歩▲7五歩△6四歩▲7六銀△4四銀(1図)

 △4三銀に先手は▲7七銀と上がりました。

 これで居飛車の作戦は玉頭位取りに決まりました。

 ここで△3二飛と寄り△3五歩から石田流に組む手も有力です。

 しかし、今回は△4五歩と突く手を調べてみましょう。

 △4五歩に先手は▲7五歩と位を取ってきます。

 そして△6四歩と突いた手に▲7六銀と立ってきます。

 ここで△8八角成▲同玉△5四角と打っても▲7七玉で大した事はありません。

 後手は△4四銀と角交換を拒否します。

1図以下の指し手
▲6六歩△6三金▲6七金△5四歩▲4八飛△7二銀(2図)

 ▲6六歩と、6筋の歩を交換する手を見せながら▲6七金と上がる手を作ってきます。

 対して後手は△6三金と上がって歩交換に備えます。

 先手は▲6七金と上がりました。

 後手は△5四歩と突きます。

 次に△5五歩▲同歩△同銀▲5六歩△4六歩と指す順が実現すれば優勢になります。

 ▲4八飛と穏やかに受けました。

 ここで△9二香と上がり穴熊にする手もあるのですが、△9四歩▲9六歩の交換をしているので若干上がりにくい感じです。

 一手で囲いが完成するし、美濃囲いは堅い囲いですので△7二銀で充分です。

2図以下の指し手
▲8六歩△5五歩▲同歩△同銀▲7七角△5四金▲8五歩(3図)

 ▲8六歩で▲7七角と上がる手も考えられます。

 この場合は△8四歩と突き△8三銀から△7二金と銀冠に組み上げます。銀冠は堅い囲いで、対位取りには優秀とされています。

 その順を嫌って先手は▲8六歩と突いたのです。

 後手は△5五歩▲同歩△同銀と一歩交換に出ます。

 ここで▲5六歩と打って簡単に局面は収まる様に見えますが、後手には△同銀と強く取ってくる手があります。以下▲同銀に△5五歩(変化A図)と打つ狙いです。

 変化A図の局面は後手銀損でも、先手の銀も死んでいるので大して損ではありません。

 問題はここで先手に良い手があるかどうかですが、一見した所、なさそうに思います。

 変化A図からの仮想手順で▲5五同銀△同角▲5六歩△4六歩▲同歩△同飛、の様になれば後手優勢です。

 さて本譜、先手は▲7七角と上がって先の順を回避します。

 それに対して△5四金(5六歩は指し過ぎ)と圧力を加えます。

 ここで先手は▲8八玉とは寄りにくい(間接的に後手角筋に入るのと離れ駒が生ずるので)、▲6八金直は△5九銀の傷が残る、という事で▲8五歩と手待ちをします。

 3図でどう指すか、△1二香と待つか、△6五歩▲同歩△5六歩と攻めるか、△6二飛と回るか、他にも手はあります。

 とにかく戦いの主導権は振り飛車が持っています。

 3図は振り飛車有望だと思います。

基本図以下の指し手②

基本図以下の指し手
△4三銀▲5五歩△7二銀▲5六銀△6四歩▲3六歩△7四歩(4図)

 今度は5筋の位を取った順を解説したいと思います。

 振り飛車の方としては居飛車の手を見て態度を決めなくてはいけません。

 先手が▲3六歩と突いた事により急戦の気配が強くなりました。

4図以下の指し手
▲4六歩△4一飛▲1六歩△5一角▲3七桂△1二香(5図)

 先手は▲4六歩と突いてきました。

 ここで△4一飛と引くのが良い手です。

 続く▲1六歩に△5一角と引くのが好手で、▲3七桂と桂を活用した時に△1二香と角筋を避けるのも振り飛車の常套手段です。

 この形が5筋位取りに対しての振り飛車の基本形でもあるのです。

 5図はこれからの将棋ですが、玉の堅さ、駒の効率などを考えると少し振り飛車の方を持ちたい気がします。

 5図以下は▲4五歩△同歩▲同銀ぐらいの進行だと思います。

 同じ5筋位取りでも▲3六歩と突かずに▲6六歩と穏やかに駒組みをする順があります。

基本図以下の指し手③

基本図以下の指し手
△4三銀▲5五歩△7二銀▲5六銀△6四歩△4三銀▲5五歩△7二銀▲5六銀△6四歩▲6六歩△6三金▲6五歩(6図) 

 5筋位取りは、この形が一番多い様な気がします。

 ▲6六歩から▲6五歩と先手は一歩交換します。

 これにより先手は一歩持つ事と、▲6七金とさらに陣形を手厚くする狙いがあります。

6図以下の指し手
△6二飛▲5七銀△4五歩▲6六銀△5四歩▲6四歩(7図)

 6図で△6二飛と回るのが好手です。

 なぜかと言いますと振り飛車の方は、ほとんど完成された陣形に対して居飛車の方はまだまだ指したい手があります。

 ですので、今戦いを起こさなければ、だんだん居飛車の陣形が良くなっていってしまうからです。

 ▲5七銀に△4五歩と角道を開けて、▲6六銀と力を加えた時に、△5四歩と4三銀を働かせようとします。

 △5四歩を▲同歩は△同銀、あるいは△6五歩から△5四金、どちらでも振り飛車ペースです。

7図以下の指し手
△同金▲6五歩△5五歩▲6四歩△5六歩(8図)

 7図から△6四同金▲6五歩と進みます。

 ここで△5五金は▲同銀直△同歩▲5三金で悪そうです。

 △5五歩と取るのがうまい取り方です。以下、▲6四歩△5六歩と進みます。

 ここで▲5三金は△6四飛▲4三金△6六角があります。  

 8図では恐らく▲6七金ぐらいですが、△6五歩と攻めても、△6四飛と穏やかに指しても、どちらでも後手優勢です。

基本図以下の指し手④

基本図以下の指し手
△4三銀▲5五歩△7二銀▲5六銀△3二飛▲6六歩△3五歩▲1六歩△4二角(参考B図)

 △3二飛と回って石田流に組む手も実戦例の多い指し方です。

 △3二飛に対して▲3六歩と突く手は△5一角と引き▲3八飛という展開になります。

 ▲6六歩と突けば△3五歩▲1六歩△4二角で参考B図の局面になります。 

 参考B図からは▲2六飛と浮き△6四歩と歩を突いて一局の将棋だと思います。

 ただ、僕はどちらかというと後手の方を持ちたいです。

 今回の講座はこれで終わりです。

 早いもので今回が4回目の講座です。

 いつも順位戦と重なって原稿を出すのが遅いので、編集部の方々に迷惑をかけています。

 次こそは早めにと、いつも思うのですが……。

 それではまた来月会いましょう。

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村山聖五段(当時)の連載講座「ダイナミック振り飛車戦法」は、将棋マガジン1991年8月号から12月号まで、5回に渡って連載された。

村山聖九段執筆の講座は、知る限りはこの講座だけであり、非常に貴重なものだと思う。

この講座を書くことになったきっかけは、師匠の森信雄五段(当時)からの「これは命令や」の言葉。

この辺の経緯や、なぜ居飛車党の村山五段が振り飛車の講座をやることになったか、などについては、次の記事に詳しい。

村山聖五段(当時)の振り飛車講座(1)

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連載2回目と3回目は次の通り。

村山聖五段(当時)の振り飛車講座(2)

村山聖五段(当時)の振り飛車講座(3)

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「村山聖五段(当時)の振り飛車講座(3)」のブログ記事が2015年12月。

(3)と今日の(4)の間に、なぜ4年以上の歳月が流れたかというと、以下の理由がある。

  1. 原稿の仕事が入ると、原稿の締切り日までの間のブログ記事を事前に日数分書きだめしている。
  2. ところがこの時は、(1)~(3)に取りかかったものの、時間に余裕がなく、(4)(5)とも打ち込む文字数等が多かったため、別の短い文字数の記事を書きだめすることに注力した。
  3. 原稿を入稿した後も、少しボーッとしていたかったので、ブログは短めの記事が多かった。(4)(5)は、もう少し落ち着いてからにしよう。
  4. と思っている間に、4年以上経った。

という次第。

その間に、映画『聖の青春』が2016年に上映され、さらに個人的には2016年、2017年、2018年と、5月に開催されている「森一門祝賀会」にも参加している。

4年という月日はあっという間なのか、あるいは私がズボラなのか、どちらにしても、晴れて(4)を紹介することができた。

明日は、もちろん(5)。

 

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