中原誠十六世名人が「最も印象に残るタイトル戦」という、1972年の名人戦の第4局。
後手の大山名人、中飛車から3筋へ飛車を転換。
大山名人の自戦記より。
「一戦目から振飛車をつづけているが、振飛車戦法にとって正念場とも思っている。みじめな負け方をしてしまえば、疑問符がつくことになるからだ。幸い、三戦目までは一応成功のかたちになっているけれど、今後はどうなるか、わからない。振飛車の生命をちぢめないように祈りながら、中飛車でいくことにした」
振飛車代表としての大山名人の心意気。
先手の1六飛と後手の1五角の交換後、中原挑戦者は▲4六角。勝負手。
王手桂取り。中原挑戦者にとって、この手は全く読んでいなかった手。見落としということになるが、結果的には、これが幸いした。この後、この飛車の存在は冴えなくなる。
4四と5五に先手の角がいた状態で△5五銀。
それに対して、中原挑戦者の▲1一角成はうまい呼吸。
中原挑戦者、香、桂と入手し、先程の飛車を詰めてしまう。
以下、途中大山名人にも逆転の機会はあったが、中原挑戦者の勝利。
これで2勝2敗のタイ。