天ぷらとケーキ

一昨日のうなぎに続いて、今日は「天ぷらとケーキ」。

1999年近代将棋5月号、池崎和記さんの「普段着の棋士たち(関西編)」より。

関西将棋会館で谷川浩司九段-加藤一二三九段のA級順位戦(ラス前)があった日の出来事。

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夕休再開後、三階控室の研究をのぞいていたら、入り口付近で加藤九段がうろうろしているのが見えた。

「何かご用でしょうか」と聞くと、「だれかケーキを買ってきてくれないでしょうか」とのこと。

その声が聞こえたのか、部屋の奥から「いい子がいます!」と神崎健二六段(当時)の声。

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ここで出てきたのが、橋本三段(15歳)。

当時の記録を調べると、橋本三段は、現在の橋本崇載七段ということになる。

加藤一二三九段の注文は「ショートケーキ3個」。

この時間になると、関西将棋会館の近所の洋菓子店は閉まっているということで、橋本三段はホテルプラザへ走った。

梅田のホテルプラザは1999年3月に閉鎖されているので、閉鎖直前の話だ。(関西将棋会館の近所にホテル阪神ができたのは1999年4月)

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あとは塾生から聞いたのだが、加藤先生は夕方、天ぷら定食を注文したのに、なぜか天ぷらを食べ残していたそうだ。順位戦は長い将棋だから、そのぶん、ケーキで栄養補給しようということだったんだろう。

ところが、勝負が終わってから対局室をのぞくと、ケーキは二つ残っていた。あれれ、どうなっているの。

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勝負は谷川九段の勝ち。感想戦が終わってから、池崎さんは谷川九段と飲みにいく。

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そこで私がケーキの話を持ち出すと、谷川さんは、あきれた、という顔をしてこう言った。

「加藤先生は四時ごろ、ケーキを二つ食べていましたよ」

うーむ。ということはケーキは全部で五つ頼んだのだ。天ぷらを残したワケが、これでわかった。

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ケーキを二つ食べたあと、2時間後に天ぷら定食を食べたが食べきれず、しかし夕休再開後、やはり空腹になったので深夜の分まで見込んでケーキを三つ追加注文して、結果的に二つ残したのかもしれない。

棋士は長時間の対局で1~2㎏体重が減るという。

タイトル戦で出されるおやつは、実際面でも有効に機能しているのかもしれない。