内藤國雄九段「ベンハー」

内藤國雄九段が19歳の時に観て大きな感銘を受けた映画「ベンハー」。

「この映画の感動をだれかに伝えたい。詰将棋で再現できないだろうか」  

こう思い立って二週間で構想はできたが、その後試行錯誤が続き、作品が完成したのは、それから40数年経った2000年のことだった。

「ベンハー」は1959年制作のアメリカ映画で、次のようなあらすじ。

「ユダヤの都エルサレム。豪族の息子ベン・ハーは、ローマ軍の新将校としてやってきた幼友達メッサラと再会。だが、今やふたりの間は対立関係にあり、ベン・ハーは反逆罪に問われ、奴隷として軍船に送り込まれてしまう。やがて海賊軍隊との激戦の中、ローマ艦隊司令官アリウスの命を救ったベン・ハーは、ローマ屈指の剣闘士に成長。生き別れた母と妹の仇を討つため、宿敵メッサラとの対決、大戦車競争に挑む (Amazonより)」

この映画の圧巻なシーンが後半の大戦車競争。

「満員のスタジアムは熱気に満ち、アリーナでは馬に引かれた戦車数台が砂ぼこりを舞い上げながら激しくぶつかり合う。戦車が次々と大破する中、残ったのは二台。ユダヤの豪族の息子、ベン・ハーと、幼なじみだが宿敵となったメッサラ。車輪をぶつけ合い、火花を散らす激闘の末、ベン・ハーが勝ち残り、客席から大歓声がわき起こる。  イエス・キリストが生きていた当時のローマ帝国時代を描いたスペクタクル史劇「ベン・ハー」。(神戸新聞より)」

内藤九段の詰将棋作品「ベンハー」は111手詰めの長編で、当初の斜めへの玉の移動は、キリストがゴルゴダの丘を上がる様子、後半は戦車競争のシーンと同様、玉が八十一升の盤上を縦横無尽に駆け回ってから詰め上がる。

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2002年1月20日、近代将棋主催で『内藤國雄九段と「ベン・ハー」を観る夕べ』が催された。

場所はルテアトル銀座。1960年、テアトル東京時代の同じ場所で「ベンハー」が上映され、この時は日本映画史上初の天覧上映になったという。

開場は12時30分。100人以上が参加をしていたと思う。

はじめに内藤九段から、大盤を使った詰将棋「ベンハー」の解説があった。

ジェットコースターがスタートする前のように、斜め上に玉が上がっていき、その後は玉が盤上を何回転もするようなイメージだったと記憶している。とても華麗な感じがした。

解説のあと、映画が上映された。

映画は212分の大作で、途中に休憩が入る。

私は映画の前半を覚えていないので、休憩後ではなく、解説が終わった後のことだと思う。

当時の将棋ペンクラブの幹事だった週刊誌のアンカーのSさんから私に「3時間半も続けて映画を観ると疲れるし、映画の見せ場は後半だから、これから軽く飲みに行こう」という提案があった。Sさんは一度「ベンハー」を観ているということだった。

私は飲みに誘われるとまず断らないタイプなので、「あぁ、映画が…」と思いながらも喜んで提案を受けることにした。

銀座で土曜日の午後早くから開いている飲み屋はそうそうないので、銀座1丁目の「つばめグリル」へ行く。

「つばめグリル」の名物は、ハンバーグとビーフシチューをアルミホイルで包み焼きにした絶妙な一品「つばめ風ハンブルグステーキ」であるが、飲みが主体なので、ビールに合うパテやアイスバイン(塩漬け豚骨付き脛肉を茹でたもの)をつまみにした。

結構飲んだが、映画館に戻ってみると、映画はこれから中盤にさしかかるところ。

やや酔っ払っていたので、話の展開次第では眠ってしまうかなと心配したのだが、映画の内容に引き込まれて、終わるまで眠ることはなかった。

とてもいい映画だった。

特に終盤の戦車競争は、内藤九段の詰将棋「ベンハー」のイメージそのものだった。

あらためて詰将棋「ベンハー」の素晴らしさを実感できたと思った。

→神戸新聞の記事「40年来の夢実現

→「ベン・ハー」をはじめとして「玉方実戦初形」「攻方実戦初形」などが収録されている内藤國雄九段の詰将棋作品集『図式百番』

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→映画「ベンハー」

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