郷田真隆六段(当時)の「長考意味にゃ~い!」

郷田真隆九段の、長考についての考察1998年版。

将棋世界1998年9月号、「棋聖 郷田真隆にインタビュー」より。

-棋聖位獲得、おめでとうございます。まずは率直な感想をお願いいたします。

郷田 正直に言ってピンと来ないですね。棋譜の自分の欄に「棋聖」と書いてあると不思議な感じがします。

-挑戦が決まった時はいかがでしたか。

郷田 タイトル戦挑戦は8回目ですが、そのうち獲得したのは一度だけ(第33期王位戦)という事もありましたから、そろそろ獲れたらいいな、とは思ってました。今回は2連勝という形で3局目を迎える事ができたので、気分的には楽というか、だいぶ気楽な気持ちでした。対局が一番ついている時期という事もあって、迷う暇もなかったのも良かったと思います。作戦を考える時間もありませんでした(笑)。

-昨年度は勝率・最多対局数・最多勝数の3部門を獲得されました。

郷田 そうですね。特に勝率部門は初めての受賞で、過去に二度、2位だったこともあって嬉しかったですね。

-今期もここまで21勝2敗、勝率0.913と驚異的な成績です。実力発揮という所でしょうか?

郷田 実力ではないと思いますが(笑)。一時期、6割前半から5割台まで勝率を落としたことがあったので、その分勝っているのかと思っているんですけれども。まぁ、9割というのもおかしな数字なので、いずれ落ち着く所に落ち着くと思います。

-何か転機があったんですか?序盤の長考が減ったような気がするんですが。

郷田 取り組み方を変えたという事はあります。棋士になって10年弱がたって、ここ2,3年、先輩の棋士と指す事が増えてきました。その中には早指しの棋士もいて、彼らと指した時に、またそういう粗削りでも若々しい元気な将棋に戻ってみるのもいいんじゃないかな、と思ったんです。もともと子供の頃から奨励会に入ってしばらくまでは早指しでしたので。理論を突き詰めるのもいいのですが、その場その場でやっていくのも魅力があります。

-よく聞かれると思いますが、序盤の長考中は何を考えているんですか?

郷田 構想とか、流れとかいうものを考えています。ただ、一局を指す分にはそういうものがなくてもやっていけるんですね。読みの裏付けをとっていく指し方もあるんですが、自分の大局観や経験で判断して指していく場合には裏付けは必要ありません。今はそちらを大事にしてやっている所がありますね。早指しだと相手に意表の手を指されても対応できますし、なにより終盤で時間が残っているので間違えにくくなるという利点がありますから。

-間違えるようには見えませんが(笑)。

郷田 人間なら誰でも間違いますから(笑)。ただ、早指しに欠点がないわけではなく、安易に指し手を進めてしまう、という危険性があります。今期の対局でも、たまたま相手が間違えてくれたとか、内容的に悪いものもありまして、気をつけていこうと思います。早く指すという事と安易に指すという事は違いますから。

(中略)

-一部では、1年ほど前に郷田棋聖が「長考意味にゃ~い!」と言ったという事が話題になっていましたが…。

郷田 それは話が大きくなっていますね(笑)。長考では一局の流れがすごく良く見えたりとか、いい所もいっぱいありますし、実は最近、また長考派に戻ろうか、と思っているんですよ。

-それは大ニュースですね(笑)。本日はありがとうございました。

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郷田九段の酔ったときの口癖は「あ-、意味ない意味ない」。

1997年、郷田真隆六段

「長考意味にゃ~い!」も、先崎八段などと飲んでいるときにあった発言だと推測される。

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1995年の日本経済新聞の夕刊に掲載された記事がある。

郷田九段らしさが凝縮されている、郷田ファン必見の記事。

勝負の極限では人間性試される・棋士郷田真隆氏