将棋マガジン1996年2月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。
☆競馬
阿部六段「今日のレース、結構、買っちゃいましたけど」
タマ「ヘェー。私、競馬って何度かやってみたけど一回も当たった事ないの」
矢倉四段「何回位ですか」
タマ「ウーン、10回位かなあ。割と惜しいねん、1位と3位とか、2位と3位とか」
阿部「わかった鹿野さん、これとこれを買うとき」
タマ「ウン、わかった。じゃあ、千円、ハイ」
矢倉四段「僕も、有り金全部買お」
阿部「鹿野さん、買うんやったら一万円位、買い!!」
タマ「ウーン、でも、当たってもあぶく銭もらって無駄使いするだけやから、千円でいいわ」
久保五段「皆、同じの買うんですか。連盟の人間が、そんなに一度に幸福になるわけないから、僕はやめときますよ」
タマ「うーん、一理ある」
― 久保君は正しかった ―
—–
たしかに、対局室で対局している棋士の二分の一は敗れるわけで、常に、全員が一度に幸福になれない環境と構造だ。
「連盟の人間が、そんなに一度に幸福になるわけがない」は、そのような勝負師の宿命を背負った言葉ともいえるかもしれない。