棋士の結婚1995

近代将棋1995年6月号、湯川恵子さんの「女の直感」より。

 塚田泰明八段と高群佐知子初段が婚約しましたね。

 二人の仲は3年ほど前から噂には聞いていた。”早指し戦事件”というのがあった。テレビ東京の早指し戦に二人そろって出演する予定があり、たまたまその収録前日に台風が来た・・・と。

 大昔に見た映画「不慮の事故」を思い出す。飛行機が欠航し、乗る予定だった人物それぞれの人生に思いがけない波紋を及ぼす様を描いたオムニバス映画。主演のエリザベステーラーとリチャードバートンは欠航したおかげで危ない夫婦のヨリが戻った、いや離婚したんだったかな。このカップルはまぁ映画より実生活のほうが激しいからどっちでもいい。

 とにかく台風が来た、その日、テレビ東京の担当者に2本の電話があった。

ツカダ「今ハワイに来ているんですが欠航で明日の収録に間に合わない」

 しばらく間を置いてもう1本の電話、

タカムレ「いま沖縄に来ているんですが欠航で明日の収録に間に合わない」

 電話を受けた人は忙しかったのか、「ツカダとタカムレは飛行機欠航で来られない」と報告。えらく言葉を端折ったものだ。で二人の仲がパッと噂になったわけですが、その台風の時ほんとに二人一緒に沖縄に居たんだそうですよ。

 せっかくの秘密工作が無駄になったのはお気の毒ですが、可愛らしい、お似合いのカップルですね。おめでとう!

(中略)

 清水市代女流二冠王も一時、ある棋士と婚約しそうな噂がありましたよ。

 去年レディースオープントーナメントで優勝したそのクイーン就位式の時、師匠の高柳敏夫先生が、「私も気になっていましたので当人を呼んで確認しましたところ、そういうつもりはないと言っておりました。当人の気持ちが決まっているのなら、安心しまして・・・」と、スピーチ。続いて祝詞に立った米長邦雄先生が「女性は結婚するのが最大の幸福だ。相手の男の現在の身分や何やは関係ない。好きな男と一緒になって家庭を育てていくことが幸せなんです」と。

 いろいろに勘繰ることができて面白い就位式だった。そしてある日私が女流名人位戦リーグの彼女の対局を観戦した際、

「今朝の報知新聞の観戦記はよかったですね、よく書いてくださいました」

 と言われた。一瞬なんのことか思い当たらず、帰宅して確認してみたら、彼女の恋の噂に触れたくだり、

『結婚なんてすればいいってもんじゃないから』と書いていた。どうもその一行らしい。当時の彼女の心境に当たっていたのかも知れないが、私がその原稿を書いた時はとっさに自分の亭主の顔など思い浮かべていたんですよね。あはは。

 できれば結婚はしてみる価値があるものだけど、いっぺんしてしまうと簡単にやめることもできない、やっかいなことである。親族が増えたり自分達も歳を取ったりするうちにいやおうなしに夫婦関係が変わって行く。それもまぁ面白いことですが。

つづく

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若手棋士の結婚ラッシュは、羽生善治七冠が結婚をした1996年から始まる。

今日の話題はその1年前、1995年のこと。

清水市代女流六段にこのような話があったとは初耳だった。

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この頃、湯川博士さんと湯川恵子さんは「言わせてもらえば」(毎日コミュニケーションズ)を執筆中だったと思われる。

(amazonでの内容紹介)

何年夫婦をやっても、考えること、感じることって結構違う。夫の信じられないクセ、妻の理解し難い行動等々―それぞれの目を通して夫婦間に横たわるあらゆるテーマを本音でつづる。

この本は面白い本で、特に女性が真剣に読んでいたような感じがする。

ある棋士の奥様が非常に気に入っていたという話も聞いた。

私が知っている女性も、普段はあまり本を読まないにもかかわらず、この本は熱心に読んでいた。

絶版になったので今ではなかなか手に入れるのが難しい本だが、アカシヤ書店で販売されている。

言わせてもらえば―夫婦の折り返し地点に立ちどまって…
価格:¥ 1,223(税込)
発売日:1995-11