森下卓六段(当時)「あれはここ数年ではピカ一ですね、実に美人、本当の美人です」

昨日の続き。

将棋世界1991年2月号、「森下卓に緊急インタビュー 好青年の仮面を剥ぐ」より。インタビューとテープ起こしは先崎学五段(当時)。

先崎 ところでそろそろプライベートの方に質問を移したいんですが、いいですね。心して答えてくださいよ。

森下 ええ、何なりとかかって来なさい(笑)。

先崎 世界各国、日本全国に知り合いが多いそうで・

森下 いやいや、そんなでもないんですけど(笑)。そこが、甘えん坊のいいところで、人見知りしないんですよ。小さいころからダマされたことや痛い目にあったことがない。世界各国、とはいわないけど、オーストラリア、カナダ、香港、台湾、シンガポールなんかに知り合いや友達がいます。

先崎 香港、台湾ですか、なんかアブナイですね。

森下 (物凄いカン高い声で)何言ってるんですか!誤解です!

先崎 まあまあそう怒らんと―。本なんか読む?(必死に話題を変える)

森下 歴史物が多いですね。司馬遼太郎とか吉川英治とか、僕は信長が好きで、そのての戦国物はだいたい読んでます。

先崎 経済関係の本も多いんじゃあ―。

森下 いや、そんなには。

先崎 16、7から金貨を買いこんでいたという噂があるけど。

森下 ・・・。

先崎 へっへっへっ、一本取ったな。

森下 あれは嘘です!

先崎 まあまあ雑誌なんかも―。

森下 いや、あまり雑誌は好きじゃないんですけど、必ず読むのは『ハナコ』と『歴史街道』ですね。

先崎 『ハナコ』ですか。デート用ですね(笑)。

森下 いやいや(何故かにやける)。

先崎 好きなタレントとか歌手は?

森下 昔は森高千里が良かった。いや今でもいいんですけど(突然喋りまくる)。あと最近では有森也美がいい。あれはここ数年ではピカ一ですね、実に美人、本当の美人です。小学校のときはキャンディーズの大ファンだった。当時のビデオは大事にとってあります。

先崎 へービデオを、今でも見ますか。

森下 ええ、ごくたまにですけど、昔のノスタルジアにひたるために。

先崎 初恋は?

森下 だんだん芸能レポーターみたいになって来たね(笑)。小学校2、3年だったかな。

先崎 森下さんぐらいの男ならば女性がほうっておかないと思うんですが、ガールフレンドは何人くらい。

森下 いやいや、数人ですよ(大いにテレる)。

先崎 デートなんかは?

森下 まあまあ、いいじゃないですか。

先崎 でも森下さんももう24ですもんね。そろそろ結婚など・・・。

森下 うん。僕は、一人暮らしはあまり長くやるものではないという信念を持っているんだ。今のとこ(東中野)に来てから2年になるけど、あと2年や3年も一人暮らしはしたくない。

先崎 それはまたなんで。

森下 一人暮らしが長くなると、それにつかっちゃって板についちゃうようなところがあるでしょう。ああいう感じがいやなんだね。そのためにも、結婚は早目にしたいですね。相手がいれば(笑)。

先崎 数人のガールフレンドのなかで、この人となら―という女性はいますか。

森下 いやいや、お茶を飲んだり、映画を見たりするだけの健全な友達ですから。僕は別に理想が高いわけではないんで、そのうちつかまって、見切り結婚ということはあるかもしれないけどね。

先崎 おお、何と冷静な自己分析!(笑)。ところで初体験は―?

森下 何を訊くんですか!馬鹿な質問もいい加減にしてくださいよ。

先崎 ソープランド?

森下 ・・・どうでもいいでしょ。

先崎 まあそりゃそうだ。でも森下さんに数人もガールフレンドがいるなんて、びっくりしたなあ、将棋一筋かと思っていたから―。(突然あらたまって)それではちょっと同業者の人達についての評論をおうかがいしたいんですが、よろしいでしょうか。

森下 ええどうぞ。

先崎 まず中原名人。

森下 気品があります。ちょっと優雅な感じがして―。憧れますね。

先崎 大山先生。

森下 まさしく超人、鉄人です。67にしてあの粘り、よくぞあそこまで、と思います。かくありたい。

先崎 谷川竜王。

森下 年は若いけど、さすがに将棋界の第一人者らしい風格がある。責任感や使命感が凄く強いような気がする。やっぱりトップに立つ人だな、という感じですね。

先崎 若手に移って、羽生から―。

森下 一言でいって、強い人間ですね。僕みたいな甘い人間とはえらい違いだ。今回竜王戦負けたけど、皆があれこれいうほどこたえないと思います。

先崎 佐藤康光は。

森下 彼は、本当によく研究していますね。自分より研究していると思う。

先崎 さすがの森下さんも脱帽ですか。

森下 いや、脱帽というわけではないんですけど、ただ熱心だなと―。

先崎 なるほど、脱帽しないあたりはさすがだ(笑)。次は塚田さんなんか―やっぱり目標ですか?

森下 ええ、塚田さんとは同期なんですけど、出世のスピードが全然違って―。以来ずっと目標にしています。性格もさわやかで素敵だし、尊敬しますね。

先崎 さて、研究会仲間でいくと、森内君。

森下 うーん、彼は、ちょっと分からないところがある。なんていうか、腹に一モツみたいなところがあるような―。

先崎 森さん(けい二九段)。

森下 いやあの先生は、タフです。不死身のスーパースターです。ああはなれない、本当に凄いです。

先崎 ミスタータフネスマンか(笑)。

森下 うまいこと言うね。

先崎 おっと大事な人を一人忘れていた我が師匠の米長邦雄について一言。

森下 いろいろな意味で尊敬します。まず、名人戦で何度でも立ち向かって行く精神力は恐ろしい。あの先生でもあれだけ頑張っているんだと思うと、勇気づけられますね。

先崎 時々パンツを脱ぐ奇癖について一言(爆笑)。

森下 いいんじゃないですか―あまり近くで見たいとは思わないけど(笑)。

先崎 本誌連載中の鈴木輝彦さんは。

森下 あまりよく知らないんですけど理想が高いかな、と―。

先崎 林葉直子について何か一言・・・。

森下 美人ですね。小さい頃から知っているんですけど、ずい分明るくなったような気がします。もっと将棋界のために頑張ってもらいたい。

先崎 中井さんは。

森下 非常に将棋に対して真面目だと感じますね。熱心でしょう。

先崎 僕について一言。

森下 うーん、えーと、そうですね。目の前だと言いにくいなあ。

先崎 まあまあそう言わんと。

森下 意外に繊細なところがあるかな。それと、これも意外だけど、案外かしこいんじゃあ―。

先崎 意外に繊細でかしこい(笑いころげる)。それはそれは。では最後に屋敷伸之。今度棋聖に挑戦するわけですけど、その抱負なども交えてお願いします。

森下 別に抱負はありませんね。いつもの通りに指すだけ。

先崎 彼の性格はどう思います。

森下 分からない。本当に分からない。あれだけ性格の見えない人は珍しいですよ。

先崎 将棋については少し分かるでしょう。

森下 うーん。相手に呼吸を合わせないようなところがある。普通の人ならば、相手が1時間費ったら、お返しに10分くらいこちらも考える、みたいなことがあるけど彼にはない。異質の将棋ですね。僕の将棋は、別に策を弄するタイプではないので、いつもの通り、それで負けたら仕方ない。そう思って戦います。

先崎 なるほど、いやいや、今日は勉強になりました。どうも有難うございます。

—–

あれは1992年だったか1993年だったかの土曜日、目黒区青葉台の地下1階にある酒場へ行くと、10人ぐらいのグループの若い人たちが楽しそうに飲んでいた。

私たちは二人だったのでカウンターへ。

しばらくすると、店主が、「今日は有森也美ちゃんの誕生日のお祝いなんだよ」と教えてくれた。

有森也美さんの高校時代の同級生たちが祝ってくれているという。

ミーハーな私は、背中に「!!」と心地良い緊張感が走ったが、だからといって、首を180度回転させて後ろの席を見るわけにもいかない。

トイレに立った時、チラッと席の方を見てみたが、若くて可愛い女性が多かったので、数秒の短い時間で有森也実さんを発見することはできなかった。

顔を見ることができたのは、有森さんたちの帰り際。

森下卓六段(当時)ではないが、見た瞬間、心が溶けそうになるほどの美しさだった。

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