中原誠十六世名人「え。誰でもやっているでしょう。こういうのは・・・」

近代将棋1994年1月号、「棋士インタビュー 中原誠前名人 自然流の研究と鍛錬」より。

近代将棋同じ号より。

 大山さんはタイトルを獲るのは簡単だが、維持するのがたいへんで、それが出来て一番の人だ、とおっしゃっていた。

 「そうですね。下から勝って獲りにいくのは、負けてもともと。失うものはないですから。待っているほうはコンディションを整えなければいけない。・・・あの・・・大山先生はそれを完全に摑んでいた人じゃないでしょうか。今では羽生くんがうまい。うまそうな気がしますよ。防衛する側は負担が大きいのですが、その負担を感じないようにもっていく」

 そのへんの秘訣が将棋の勝者のコツみたいですね。精神統一とか座禅みたいなことをやったことは?

 「若いときはありましたよ。奨励会のときなどは、夜神社や公園へ行ってじっと座って精神統一の練習をしたりね」

 へええ。やはりそういう訓練を・・・。

 「え。誰でもやっているでしょう。こういうのは・・・」

 誰でもはやっていないと思いますけど(笑い)。

(以下略)

—–

夜、神社や公園へ行って、じっと座って精神統一する。

今の季節だと、猛暑や蚊に耐えなければならないのでとても辛そうだ。

というか、このような俗事を気にしていては精神統一にならない。

「え。誰でもやっているでしょう。こういうのは・・・」と平然と言う中原誠十六世名人、さすがである。

さすがだ。

それに対して、「誰でもはやっていないと思いますけど」と返すインタビュアーの湯川博士さんもすごい。

—–

誰でもやっていることだと自分では思っていても、実は誰もやっていないということがある。

私の場合は、チーズをおかずにご飯を食べる、ことがそうだった。

中学や高校時代、母が作ってくれる弁当にはチーズ(プロセスチーズ)が入っていることが多かった。

このチーズとご飯の相性が抜群で、私は今でも大好きだ。

しかし、人にこのことを話すと、「考えられない」と言って、皆一様に気持ち悪そうな表情をする。

私はチーズでご飯は普通のことだと思っていたので、結構な衝撃を受けた。

「騙されたと思って試してみて」とお願いして、試してくれる人も中にはいた。

「たしかに美味しいかもしれないけど、でもねえ」

佐藤康光九段の嘆きがとてもよく理解できる・・・

佐藤康光王将(当時)「我が将棋感覚は可笑しいのか?」