将棋世界2004年2月号、森内俊之竜王の第16期竜王戦第4局自戦解説「森内俊之新竜王に訊く」より。記は読売新聞の西條耕一さん。
初手に▲2六歩と突いた。初戦から四間飛車、横歩取り、相矢倉と来たので、本局では相掛かりか角換わりを指したいと思っていた。
羽生さんは角道を止めて四間飛車に。NHK衛星放送解説が鈴木大介八段、立ち会いが杉本昌隆六段だったので、四間飛車もあるかなと思っていた。
第2局で立ち会いが内藤國雄九段のとき△8四飛型の横歩取りになったように、羽生さんは関係者を意識して戦法を決める傾向が少しあるようだ。
藤井システムは、予想していた戦型の一つ。▲7七角と上がって居飛車穴熊を目指した。
(中略)
まだ少し粘られると思っていたので、投了されて少し驚いた。今冷静に見れば次に▲8五歩と突けば受けはない。
▲7七角から▲4七桂がぴったりした手で、うまく勝つように出来ていた。今までにひどい逆転負けを何度もしているので、対局中は相手が投了するまで油断しないよう自分に言い聞かせていた。
これまで羽生さんとの番勝負は、接戦になったことすらなかった。子どものころから自分より少し先をずっと行っていて、道を切り開いてきた人。大きな勝負で勝ちたいと思っていた。
シリーズでいいスタートが切れてからは、とにかく四つ勝てるかどうかが自分にとってすべてだと思っていたので、スコアには全くこだわっていなかった。
記者会見で「一度は勝ちたいと思っていた相手なので、願いがかなってうれしい」と答えた。それが本心だった。
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森内俊之竜王が初めて竜王位を獲得した時の一局。
羽生善治名人とタイトル戦を戦って、初めて番勝負を制した時でもあった。
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羽生善治名人が、その時の立会人や大盤解説者の得意戦法を使うことがしばしばある、とは多くの人が(もしかしたらそうなのではないか)と感じていることだが、ここでは森内俊之竜王自身がそのことを言及しているので、そのような意味でも非常に貴重な自戦解説ということができる。
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たしかに、今となっては珍しいことではないが、△8五飛戦法全盛時代に△8四飛と指されるケースは非常に少なかったものと思われる。
羽生名人はオールラウンドプレーヤーであり、なおかつ探究心が旺盛なので、そのようなことも可能となるのだろう。
羽生名人が採用する戦法と立会人の得意戦法の相関関係というものも、一度調べてみたいものだ。