先崎学2級(当時)「チビだけど、タコじゃないぞ」

将棋世界1983年10月号、信濃桂さんの「東京だより」より。

 いつの間にかチビっ子の奨励会員が隣で将棋を指している。米長門下の先崎学2級だ。相手はカメラマンの弦巻さん。

 飛車落ちでいい勝負をしているから、この人もなかなかの腕だ。

 先崎君は13歳だが、一見したところは小学生。普段大人と付き合うことが多いのか、こまっしゃくれたことをいうのが面白く、奨励会のアイドル的存在だ。

 30代半ばのカメラマン氏との舌戦もどちらが勝ちかは容易に判定できない。とうとう業を煮やしたカメラマン氏、

「このチビダコ!」

 先崎君、すかさず、

「チビだけど、タコじゃないぞ」

 一同爆笑したところで、ちょうどいい時間となった。

 大島四段とカメラマン氏を誘い、生ビールを求めて会館を辞す。

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写真家の弦巻勝さんの日本将棋連盟特設サイト「弦巻勝のWeb将棋写真館」に、先崎学九段が奨励会に入ったばかりの頃の写真が載っている。

先崎九段の子供の頃

弦巻さんが「このチビダコ!」と言ったのは、この写真の2年後くらいのこと。

偶然発見したことですが、上の2枚の写真をビートルズの「ペニー・レイン」を聴きながら見ると、自然と涙がこぼれてくるので、ぜひ試してみてください。

「ペニー・レイン」は、ポール・マッカートニーが過ぎ去りし日々を思い出し作曲した曲。

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将棋世界1983年10月号、「将棋まつり見て歩き」より。

 次のプログラムは大山十五世名人の講演。これを聞き逃すわけにはいかない。人もどんどん集まってきた。

 さすがに名人の講演は慣れたもの。これからの棋界の事にも触れ、谷川名人についても「上に立つ人は人が真似できない将棋をつくらなければならない。谷川さんもこれからが大変でしょう」と後輩にアドバイス。また三笠宮殿下との二枚落ちの話が面白かった。

「勝つわけにはいかないし、あまり早く負けるのもおかしいので困りました。結局殿下が勝たれたのですがその後で殿下が言われるのには『大山さんは強いね。他の棋士と指すと私が中飛車で30手位で勝ってしまうのに大山さんの場合100手もかかったもの』。負けて初めてほめられました」。場内もこの話には爆笑。名人はこの後すぐサイン会。まったく年齢を感じさせないタフネスぶり。サインをもらった人は宝物を扱うような手付きで持っていた。

(以下略)

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10月5日に更新された「弦巻勝のWeb将棋写真館」では寛仁親王が将棋を指している写真が掲載されている。

局面は2枚落ちで寛仁親王が中飛車の構え。

この時の将棋まつりで語られた、大山康晴十五世名人との対局だった可能性が高い。

大型カメラと35ミリカメラ

弦巻さんならではの、寛仁親王の非常に貴重な写真だと思う。

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今日、「ねこまど将棋教室・四ッ谷校」で、写真家の弦巻勝さんによる講演会が開催される。

☆10/10(土) 16:00~17:30
対 象:一般
定 員:24名
受講料:4,000円
内 容:弦巻勝 講座 「弦巻勝氏に聞く将棋界の写真」

10/10(土) 弦巻勝 講座「弦巻勝氏に聞く将棋界の写真」(ねこまど)

今日は残念ながら行くことができないが、次に機会があったらぜひ行ってみたいと思っている。