出来たらプロ級、正解を見て良い手だと分かれば有段者の「次の三手」

将棋世界2000年11月号、鈴木大介六段(当時)の「鈴木大介の振り飛車日記」より。

 対真田六段との全日プロ。

 最近中飛車や石田流をやらないのですんなり四間飛車対居飛穴に進む。

(中略)

 以下優勢のまま迎えた3図。ここで自慢の3手の決め手がある。出来たらプロ級、正解を見て良い手だと分かれば有段者である。

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3図以下の指し手
△4四角打!▲3二飛△7五歩(渋すぎる好手)(4図)

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 △4四角打は攻防の一手で気付くかもしれないが▲3二飛に対する△7五歩はプロ好みの手厚い一手で難しかったと思う。▲1二飛成にはさらに△8五歩と落ち着いて位を取るのが良い。

 本譜は▲1二飛成に替え▲8六桂だったが△8五銀以下手厚く寄せて快勝。終局後、気分良く中田功六段と新宿の棋士がよく行く鮨一へ。

 10時、帰ろうとすると行ちゃん(行方六段)登場。誰々が強いの弱いの将棋の裏話をしていて2軒目で終電が詰まされてしまった。やはり棋士同士で将棋のことを話すのは面白い。

 午前3時半帰宅。将棋に勝つと、後はどうでも良くなっちゃうのは悪いクセで直りそうもない…。

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3図からの△4四角打~△7五歩は、本当にプロ好みの手厚く渋い手順だと思う。

私の棋力なら、一生かかっても見つけ出せそうにない手だ。

基本的な方針は、4四に角を設置して、8筋の歩を伸ばしていって△8六歩▲同歩△8七歩を狙う。しかし6二の角が4四に移動したのでは▲8四香や▲8四桂の筋が残るので、6二の角はそのままにしておいて△4四角打とする、△7五歩は、先手から▲7六歩と打たれてそこを拠点に▲7五桂などとされる筋を未然に防いだ、ということなのだろう。

このような、全く想像もできないような手順を見るのも楽しい。

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「鮨一」は新宿三丁目にあった寿司店。現在、棋聖戦の観戦記を書かれている星野崇さんが経営をしていた。

私も何度か連れて行ってもらったことがあるが、当時の二上達也日本将棋連盟会長から若手棋士に至るまで、多くの棋士が通った店だった。

同じビルに有野芳人七段がやっている雀荘があり、鮨一から有野雀荘に向かう人も沢山いたようだ。

この、「鮨一→有野雀荘」のコースをはじめとして、「鮨一→新宿三丁目のゼエロン」、「鮨一→新宿二丁目のあり」、「鮨一→ゴールデン街の一歩」、「鮨一→西新宿の京」などの定跡が当時は盛んだった。

鮨一は、いくつかの記事にも登場している。

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