将棋世界2000年12月号、鈴木輝彦七段(当時)の「棋士それぞれの地平 玉三郎似の勝負師 北浜健介六段」より。
北浜君とは、20歳以上違うのに何度か酒や麻雀で一緒に遊んでいる。疎遠になってしまう年代ではめずらしいかもしれない。一言でいうと、なよっとしていて、女形で有名な坂東玉三郎に似ている感じだ。
(中略)
一度、島君と麻雀を打った。北浜君には”北浜”という役が一役、彼だけに付く。しかも長考だが、少しも気にならない。半荘に一度上がるかどうかだし、周りへの気くばりが利いていて、ほほえましい打ち方だからだ。将棋以外には、勝負の炎を燃やせないタイプのようだ。
真部邸で”たぬき”というゲームをしていて、途中「そんな賭け方では大成しない」と郷田君に叱られていた。「そうですか」と素直に目一杯張った時には北浜君の目が出た。そんな時、持って生まれた勝負の運が強い子だな、と妙に感心したりした。
(以下略)
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”たぬき”はサイコロを複数個振るゲーム。
きっと、北浜健介六段(当時)は、例えばチップを1枚ずつ賭けるような超堅実な張り方をしていたのだろう。
そこで兄貴分の郷田真隆八段(当時)が、「そんな賭け方では大成しない」。
それで、北浜六段が超素直にチップを全部張ると見事に的中、という昭和30年代の日活無国籍アクション映画のような流れ。
北浜六段も気持ちが良かったろうが、郷田八段も大きな達成感を得たことだろう。
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私は生まれてから一度だけ、カジノ(ソウルのホテルの地下にあるカジノ)へ行ったことがあるのだが、その時は、ルーレットだけをやって、賭け方は確率二分の一(偶数または奇数、赤または黒)の所に1枚ずつ、というものだった。
私は大成できない恐れがありそうだ。