将棋世界2003年8月号、「第16期竜王戦竜王ランキング戦3組」より。
振り飛車党同士の決勝となった杉本-久保戦。当然相振り飛車になると思われたが、杉本が居飛車に変化。振り穴対銀冠に。2図は▲6八角と引いた局面。
いかにも軽い振り飛車陣に対して、金が上ずる先手陣。
「随分いい」と思った久保は手筋とばかり△5八歩。しかし、▲5三歩△同飛▲4五桂△同銀▲同金△5九歩成▲5四歩△5一飛▲5九角と進み先手十分。△5八歩では△7二金引と自陣を引き締め、次に△5八歩を狙うのが正着。本譜は金で抑え込まれた。
「杉本さんは居飛車の勝率が非常に高い」と控え室の深浦朝日。手厚い強さも見せ杉本優勝。
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杉本昌隆七段は三段時代に、村山聖四段(当時)から「全振り飛車党の中で唯一の本格正統派」と非常に高い評価を受けている。
序盤から緻密な作戦をたてて少しずつポイントを稼いでいくのが杉本七段の棋風で、振り飛車党には珍しい居飛車的なアプローチ。
そのような背景が、居飛車での高勝率に繋がっていると考えることができそうだ。
→村山聖四段(当時)「杉本三段は全振り飛車党の中で唯一の本格正統派です。メチャクチャ格調が高いんですよ」