近代将棋1985年1月号、「ミニ棋界情報」より。
奨励会の日 11月20日(火)
最終日は、米長三冠王による奨励会員への講話・午後からは奨励会有段者32名による「10分切れ負けトーナメント戦」が行われました。
トーナメントの方では「切れ負け八段」を自他ともに認める櫛田初段が2回戦であえなく負け。
結局決勝は、大方の予想(?)通り田畑三段と羽生二段の勝負となりました。将棋の方は田畑君が中盤ポカを出して時間を使いすぎ、切れ負けで羽生二段が優勝。
羽生(はぶ)二段は二上門下の14歳。谷川名人以来の中学生棋士として、将来を嘱望されている奨励会員です。
某氏「彼は強いですネ。5年後ぐらいには八段になりますかネ」
滝六段(奨励会幹事)
「甘いです。タイトルをとる棋士になるでしょう」
なんとも楽しみな新人が現れてきたものです。
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「切れ負け八段」は、切れ負けルールで鬼のように勝っているという意味だが、他の追随を許さないほど切れ負けばかりしている、のようなニュアンスでも伝わってくる用語だ。
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この時の模様は、将棋世界でも取り上げられている。
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「彼は強いですネ。5年後ぐらいには八段になりますかネ」
「甘いです。タイトルをとる棋士になるでしょう」
羽生善治九段が初めてタイトル(竜王)をとるのが1989年、八段(=A級昇級による)になったのが1993年のこと。
タイトルをとることはもちろん大変なことなのだが、二段から5年で八段(毎年順位戦で昇級)になるのも非常に大変なわけで、「5年後八段」と「タイトルをとる」、どちらが難しいことなのかは非常に微妙なところ。
ただ、タイトルをとった棋士の数に比べ、順位戦で毎年昇級した棋士の数は圧倒的に少ない(中原誠十六世名人と加藤一二三九段だけだと思う)ので、「彼は強いですネ。5年後ぐらいには八段になりますかネ」は決して甘くないことは確かだ。