将棋マガジン1990年4月号、バトルロイヤル風間さんの突撃マンガインタビュー「大山康晴十五世名人 66歳の棋王位挑戦!!」より、大山十五世名人への質問。
自分は天才だなーと思うのはどんな時ですか?
「ない。思わなかったほうだね。だから不調の時期が短い。そういう人(天才と思う人)は長いんじゃないかな」
好きな駒は?
「ない。第一人者は好ききらいをなくすものなんだ。食べ物も人も船酔いもなんもかんも。長所は即欠点につながる。長所のある人間はトップになれない。だから面白みがなくなるんだ。面白みがあるうちは天才なのだ」
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大山康晴十五世名人は常々「天才と言われているうちは本物(トップ)ではない」と言っている。
そういうわけなので、大山十五世名人にとっての「天才」は、決して手放しで良い意味というわけではない。
「長所は即欠点につながる。長所のある人間はトップになれない。だから(トップは)面白みがなくなるんだ」
これは大山十五世名人自身のことを語っている。
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バトルロイヤル風間さんは、この時にいろいろな質問をしているが、大胆にも次のような質問もしている。
- 好きな食べ物は?→ないようにしている
- 好きな色は?→同上
- 好きなケーキは?→並べられればシュークリームをとる
- 好きな女優は?→テレビなど見てないのでわからない
- 好きな動物は?→無答
- 好きな町は?→カナダのバンクーバー
- 好きな山は→なし(大山っていったら面白いと思った僕)
- 好きなプロレスラーは→無答
- 将棋の世界以外でライバルと思った人は?→なし
- 50年以上将棋を続けてこられた励みは?→時代によって違うが升田さんを目標にしてきた時代が長い
- 自分は棋界で何番目くらいに強いと思いますか→計算したことない。比較するものじゃない
- ”リトル大山”南といわれていますが、似てると思いますか?→もっと似た人たくさんいますよ。湯川秀樹や鈴木健二
- 選挙に出ようと思ったことは?→ばかばかしいし当選しても歩じゃないの。王ならいいけど
- 今後の将棋界はどうなるか?→子供と会社のトップを大事に
- ものまねができるか?→できない
(以下略)
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なごやかな雰囲気のなかでインタビューは行われたということだが、質問の回答だけについて言えば、まさに「だから面白みがなくなるんだ」を体現している。
しかし、「ものまねができるか?」に真面目に答えているところが面白い。
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選挙出馬についての「ばかばかしいし当選しても歩じゃないの。王ならいいけど」は、ある世界でトップをとった人が議員になったとしても、始めは会社で言えば新入社員の扱いになるということ。