郷田真隆四段(当時)「考えていません。勝ってから考えます」

将棋世界1991年7月号、先崎学五段(当時)の「公式棋戦の動き」より。

近代将棋1991年7月号より。

 前号で「コテコテにしてやります」と珍しく過激な発言をした谷川だが、あにはからんや、逆にコテコテにされてしまった。最近、南には相性が悪いようである。

 谷川の弁明は116ページからの自戦記でお読み頂くとして、もう一つの山、中原を新鋭 郷田が倒すという金星をあげた一局を見て頂きたい。

 金星と書いたが、ファンの方から見れば四段が名人に勝つというのは信じられないことだろうが、仲間内の反応は、案外冷静で、それ程意外なことだとは思っていないようだ。

 ただし、段の権威がなくなったからといって、四段が名人に勝つということは大変なことだが―。

 日頃若手との対戦では受けに回り、堂々と胸を張って対局することの多い中原だが、この日ばかりは、攻めに攻めて、攻めまくった。

 しかし、王者の攻めも、新鋭の強引な受けの前に攻めあぐむ。

(中略)

 終了は6時58分。134手にて、郷田が2期連続の決勝進出を果たした。

 郷田四段のコメント。

「尊敬する中原名人に教えて頂けるうえに勝てるなんて夢みたいです。このツキを生かし次も頑張りたい」

―勝つと19歳と20歳の対決と、非常にフレッシュな対戦になりますが。

「考えていません。勝ってから考えます」

 おとなしいが、内に秘めた闘志はすごいはず。僕は個人的には彼を応援する。

近代将棋1991年7月号より。

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「ファンの方から見れば四段が名人に勝つというのは信じられないことだろうが、仲間内の反応は、案外冷静で、それ程意外なことだとは思っていないようだ」

四段2年目で名人に勝つ、というのは、今でも大きなニュースになると思う。

この当時の「仲間内の反応」は、羽生世代若手棋士の勢いがいかに凄かったのかをあぶり出している。

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「尊敬する中原名人に教えて頂けるうえに勝てるなんて夢みたいです。このツキを生かし次も頑張りたい」

謙虚さが輝いている。

「考えていません。勝ってから考えます」も格好いい。

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現在、藤井聡太七段の最年少タイトル獲得なるか、との報道が多い。最年少でのタイトル獲得できるかどうかは、この記事に出てくる棋聖戦が舞台となる。

ただ、最年少タイトル獲得できるかどうか、私はそれほど重要視する必要はあまりないと思っている。

高校を卒業するまではエネルギーを蓄える期間。

むしろ、羽生善治九段や中原誠十六世名人のような、高校を卒業してからの、より加速度を増した大活躍を心待ちにしている。