久保利明棋王に佐藤康光九段が挑戦する、棋王戦第1局の対局場は、上海のレキシントンプラザホテル。→中継
レキシントンプラザホテル(上海銘德莱星頓広場酒店)は昨年オープンした五つ星ホテルで、28階建て、288室の客室を持つ。虹橋空港から20分、浦東国際空港から45分という距離に位置する。
ホテル内のレストランは4軒で、ジャンルは次の通り。
- ビュッフェレストラン
- 上海・シンガポール料理
- ステーキハウス
- 広東・上海料理
ホテルのサイトにはメニューなどが掲載されていないため、昼食の予想は極めて難しい。
ただ、上海へ行けば、朝から晩まで中国料理になると思うので、対局時の昼食は中国料理ではないという可能性もある。
そういうわけで、ここは大胆に、両対局者とも「カレーライス」あるいは「幕の内弁当」と予想したい。
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ところで、上海を代表する料理は、小籠包と上海蟹。
上海のほとんどの飲食店では黒酢がテーブルに用意されている。小籠包を黒酢につけて食べるのが上海の主流のようだ。
上海蟹の旬は10月~11月。上海蟹はワタリガニのような雰囲気なので上手に食べるのが難しいが、中国の人は殻ごと口に入れて食べ、最後に砕けた殻だけを口の中から出すという見事な食べ方ができる。
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10年ほど前、中国の若手女性に勧められて「かえるの旨煮」という上海家庭料理を食べたことがある。
かえるは角切りにされていたが、立方体状の一つの面には黒っぽい皮がついていた。
皮をはずして食べてみると、日本のカエルとは違うのか、繊維質が多くゴリッゴリッという食感だった。一口食べてギブアップ。
一方の彼女は、皮がついたまま美味しそうに食べて、最後に皮だけを口の中から皿に落とした。
口の中のものを皿に落とすというのは日本的にはあまり行わないことだが、彼女の皿への落とし方には優雅さと気品があった。
上海蟹の食べ方と同様、上海流(中国流)なのかもしれない。
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「日本の中国料理」と「中国の料理」の最も大きな違いは、味の濃さとのこと。中国の人の話では、紹興酒もタバコも中国のほうが味が濃いという。
そういうわけなので、中国から来た人を日本人向けの中国料理店へ連れて行っても、喜んではくれるが、彼らの認識は日本料理を食べているという感覚だ。
中国の若い人向けには、焼肉や寿司(回転寿司でも可)が一番喜ばれるようだ。
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私が「かえるの旨煮」を食べた店は、歌舞伎町の「上海小吃」。
「かえるの旨煮」は中国の人向け限定の裏メニューだったようだが、上海の家庭料理メニューが豊富で、上海の人も「上海と同じ味」と太鼓判を押す名店だ。
店内は中国レトロ調で、50年前の中国の食堂の雰囲気。
風林会館前の細い路地の奥にあるので、日常の中の非日常をすぐに味わうことができる。金城武主演の映画『不夜城』(1998)のオープニングがこの路地で撮影されたほど。
店内を仕切るのは上海生まれの女性店長で、愛嬌のある面白い日本語を話してくれる。
料理の品目がたくさんあるので選択に迷うが、メニューに載っている料理は間違いなく美味しい。
私がいつも頼むのは「蟹の春雨鍋もの」で、これは春雨が絶妙な味に仕上がっている。
一番人気のメニューは「豆腐の細切り」で、豆腐とは思えない薄味の麺のような感触。
今回あらためてメニューを見てみたが、「かえるの旨煮」に最も近いのは「かえるの裸煮」で、裸煮というくらいなので皮はついていない。ただ、「かえるの旨煮」とは蛙の切り方が違うし値段も違うので、かなり雰囲気が違う料理なのだと思う。
そういえば、10年前に一緒に行った中国の女性が食べていた上海家庭料理「トマト玉子炒め」がメニューには載っていない。
あれも裏メニューだったのか。
中国料理は奥が深い。