前・将棋ペンクラブ会長の高田宏さんは作家であり随筆家。
将棋ペンクラブ会報春号では毎年「新春対談」が行われているが、2000年から2008年までのホストが高田宏さんだった。
私は、2002年から対談のテープ起しを担当することになり、高田宏さんの謦咳に接するようになった。
対談を横で聞いて、その後の打ち上げで酒を飲む。
対談を聞いた後日、テープ起こしをする。
テープ起こしは何度もテープを巻き戻して会話の内容を確認しながら文字にしていくので、会話の内容が頭の中に定着してしまう。
この過程で、高田さんの考え方、感じ方、人間性、人生観などが、より深く伝わってきたのだった。
そのほとんど全てに共感できると言ってもいいもので、はじめは、品が良くて立派な作家の先生だ、というくらいに思っていたのが、3年ほど経つと本当の意味での尊敬の念に変わっていった。
私はあまり好まない言葉なのだが、高田さんは日本の知性を代表する人だ、と言う人がいた。
私が高田さんを尊敬するのは知性という要素以外の部分が多いので、私流に言えば「世界中どこに出しても誇れる日本人」ということになるのかもしれない。
だからといって、高田さんは堅苦しい人では全くなく、バランス感覚に富んだセンスの良い人柄だ。
大学時代、好きな女性に振られてウイスキーを自棄飲みして散々な目にあったことや、最も好きなヤクザ映画は「昭和残侠伝」と「総長賭博」であることなども話してくれる。好きな曲は「ホテル・カリフォルニア」だ。
話し上手で聞き上手、酒を飲む相手としても最高級にランクされるのではないだろうか。
その高田宏さんが、昨年12月に行った木村晋介弁護士の新春対談のゲストである。
3月発行の将棋ペンクラブ会報春号ではこの対談が掲載される。
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高田宏さんは1932年京都に生まれ、石川県大聖寺町(現在は加賀市)で育つ。
京都大学卒業後、光文社へ入社、少女雑誌「少女」を担当する。その後、アジア経済研究所で雑誌編集、エッソ石油広報部でPR誌「エナジー」を編集。1984年から文筆専業となる。
1978年「言葉の海へ」(言語学者・大槻文彦の評伝)で大佛次郎賞と亀井勝一郎賞を、1990年に『木に会う』で読売文学賞を受賞している。
伝記小説、歴史小説をはじめ、樹木・森・島・旅・雪などの自然、猫などをテーマに随筆・評論・紀行などの著書がある。
石川県九谷焼美術館館長、深田久弥山の文化館館長を務めている。
長男は高田尚平六段、次男は画家の高田雄太さん。
先崎学八段の随筆などで、高田尚平六段など棋士仲間と夏に八ヶ岳の別荘で遊ぶ話が何度か出てくるが、この別荘が高田宏さんの別荘だ。
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高田宏さんが光文社時代、「女性自身」編集部に高橋呉郎さん、出版部に小林察さん(後に大学教授、小林宏七段の父)が勤務していた。
当時80人ばかりの光文社で、そのうち二人の編集者の子供が棋士になり、一人が将棋観戦記も書くライターになったわけで、確率的に考えても全く不思議な縁だ、と高田さんが将棋ペンクラブ会報1989年春号に書いている。
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高田宏さんの主な著作
言葉の海へ (洋泉社MC新書) 価格:¥ 1,785(税込) 発売日:2007-10 |
1978年「言葉の海へ」(言語学者・大槻文彦の評伝)で大佛次郎賞と亀井勝一郎賞。
木に会う (新潮文庫) 価格:¥ 407(税込) 発売日:1993-09 |
1990年に『木に会う』で読売文学賞。
大空と大地へ還りゆく日は 価格:¥ 1,785(税込) 発売日:2003-09 |
「吾輩は猫でもある」覚書き (ちくま文庫) 価格:¥ 612(税込) 発売日:1996-06 |
大いなる人生 価格:¥ 1,680(税込) 発売日:2007-09-10 |
木のことば・森のことば (ちくまプリマー新書) 価格:¥ 756(税込) 発売日:2005-10-04 |
冬の花びら―雪博士 中谷宇吉郎の一生 価格:¥ 1,680(税込) 発売日:1986-05 |
島焼け 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:1997-09 |
旅の図書館 価格:¥ 2,100(税込) 発売日:1999-12 |